イスラエル軍撤収のハンユニス、住民が目の当たりにした惨状 ガザ地区

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帰還する住民=パレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニス/CNN

帰還する住民=パレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニス/CNN

ガザ南部ハンユニス(CNN) パレスチナ自治区ガザ地区南部のハンユニスで、避難していた住民らが30日、約1週間ぶりに戻り始めた。イスラエル軍が撤収した後に残っていたのは、一帯の住宅や建物が見渡す限りがれきと化した惨状だった。

同地のバニスヘイラ地区では、徒歩で自宅を目指す一家や、車やロバに引かせた荷車の中で身を寄せ合って粉塵(ふんじん)まみれの道路を進む家族連れなどをCNNの契約記者が取材した。道路脇には倒壊したビルの残骸やがれきの山が続いていた。

ハンユニス東部に侵攻したイスラエル軍が激しい爆撃を行って数十人を殺害し、数千人が避難を余儀なくされてから1週間あまり。住民のナジム・アブ・アッシさんは「イスラエルが撤収したと聞いたので、様子を見に行こうと歩いている」と話した。

イスラエル軍はハンユニスの一部に対して22日に退避命令を出し、「対テロ作戦」として同市の南部からロケット弾を撃ち込むと予告した。

国連の推計によると、この退避命令を受けて15万人が避難を強いられた。多くは徒歩や荷車で、所持品を全て残したまま退去した。

イブラヒム・ムハンマド・アブ・アドワンさん(60)は7月上旬、自宅近くでイスラエルの戦車を目撃し、携帯電話にイスラエル軍の退避命令が届いたことから、家族でバニスヘイラの自宅を離れた。

「衣類や所持品を持ち出す余裕はなかった。自分たちの身一つで、その時着ていた服のまま家を出た」とアドワンさんは言う。

その後戻ってみると、自宅は破壊されていた。攻撃されたのは24日だったと告げられた。「すさまじい惨状だ」「これを見てほしい。この地区は全滅した。彼らが壊滅させた」

ガザ内務省によると、イスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃した昨年10月7日以前、ガザ第2の都市ハンユニスには、40万人以上が住んでいた。

戦争が始まった当初、イスラエルがガザ北部を攻撃したことを受け、数千人が北部からハンユニスへ避難。しかし12月初旬にはイスラエル軍がハンユニスに対する攻撃を開始し、住民らはさらに南へと避難を強いられた。

バニスヘイラの別の住民ウム・ヤフヤさんは、「最初に自宅が破壊されて、次にテントがなくなった。自分たちの持ち物が何か残っていないか確認しに行く」と話した。

大気に粉塵が充満する中、がれきの中にテントを設置する家族連れもいた。遺体袋を運ぶ男性の一行も見える。

北部のガザ市からハンユニス東部に避難しているアベド・オデハさんは、退避命令に従わず同地にとどまった。30日にCNNの取材に応じたオデハさんは、「街頭で救急隊が家々を回り、市民防衛隊が死者を家の中から避難させていた」と振り返った。

市民防衛隊は30日、イスラエル軍の撤収後、バニスヘイラ地区で42人の遺体を収容したことを明らかにした。

ガザのパレスチナ保健省は、今月22日から30日正午までに確認されたハンユニス東部の死者は290人、負傷者は700人を超えているとCNNに語った。死傷者はさらに増える見通しだとしている。

イスラエル国防軍は29日、ハンユニスで行っていた「作戦行動の完了」を確認し、ハマスの戦闘員を殺害してトンネルや武器を破壊したと発表。ハンユニスで人質5人の遺体を収容してイスラエルに帰還させたことも明らかにした。

医療支援団体の国境なき医師団は29日、戦争の全当事者に対し、ハンユニスのナセル病院の安全を徹底して守るよう訴えた。同病院では新生児や妊婦も含め、推定550人の患者が治療を受けている。

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