音楽も欧米風の髪型も禁止、タリバンの道徳徹底させるアフガニスタンの現状 国連報告

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カブール中心部の洋服店の店内。タリバンの規制によりマネキンの顔が覆われている/Rodrigo Abd/AP/File

カブール中心部の洋服店の店内。タリバンの規制によりマネキンの顔が覆われている/Rodrigo Abd/AP/File

(CNN) イスラム主義勢力タリバンが統治するアフガニスタンでは、音楽を聴くことも、水たばこを吸うことも、欧米風のヘアスタイルにすることも、全て刑事罰の対象になる。国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)が9日、アフガニスタンのそんな現状を伝える報告書を発表した。

タリバンのいわゆる「道徳警察」は、女性の人権を不当にゆがめ、「恐怖と脅しの環境」を作り出していると指摘している。

イスラム法の厳格な解釈に基づく法の制定や執行は、タリバンが実権を握った2021年に創設した美徳推進・悪徳防止省(MPVPV)が担っている。

報告書によると、例えば人や動物のイメージの展示やバレンタインデーのイベントなど、「非イスラム的」とみなされた活動はそうした解釈に基づき禁止されている。さらに、タリバンの指示は口伝えも含めてさまざまな形で出され、一貫性がなく予測できない形で執行されるという。

南西部ニームルーズ州の州都ザランジュにある男性向け理容店の前に立つタリバンの兵士/Majid Saeedi/Getty Images/File
南西部ニームルーズ州の州都ザランジュにある男性向け理容店の前に立つタリバンの兵士/Majid Saeedi/Getty Images/File

国連は21年8月15日~24年3月31日にかけ、タリバンが規制を徹底させるために暴力を行使した事案を少なくとも1033件、記録した。

事実上の美徳推進・悪徳防止省は強大な権限を持っていると伝えられ、口頭での脅しや逮捕、勾留、不当な処遇、公開むち打ちなど、さまざまな執行手段を使っているとされる。報告書は公式発表や人権侵害の報告などをもとにまとめられた。

タリバンの女性に対する人権侵害のあまりの甚だしさに、国連高官は「人道に対する罪」に該当し得ると発言した。美徳推進・悪徳防止省が女性の服装や公共の場への立ち入りを厳格に取り締まっている状況を、今回の報告書は詳しく伝えている。

タリバンは女性が営むビジネスを恣意(しい)的に閉鎖させ、女性が映画に出演することを禁じ、女性の美容院を閉店させ、避妊具の利用を制限しているという。

女性が公園やジム、公共浴場(人によっては冬の間にお湯に入れる唯一の方法)に立ち入ることは許されない。自宅から78キロ以上移動する場合は男性の保護者を同伴しなければならない。

女性はヒジャブの着用が義務付けられ、男性もひげの長さや髪型などの規定を守る必要がある。

23年12月には、道徳警察が一晩で理髪店20店を閉店させた。理髪師がひげを剃ったりカットしたり、欧米風の髪型にしたりしたという理由だった。理髪師2人が2晩拘束されたという情報をタリバンは否定している。報告書によれば、2人はもう二度とそうしたヘアカットはしないと約束して、ようやく釈放された。

タリバンの兵士が警護する中、食料の配給に並ぶ女性たち=カブール/Ebrahim Noroozi/AP/File
タリバンの兵士が警護する中、食料の配給に並ぶ女性たち=カブール/Ebrahim Noroozi/AP/File

人権を守る義務

アフガニスタンは七つの国際人権文書に加盟しており、国民の人権を保護・推進する法的義務があると報告書は指摘する。

しかしタリバンの支配は、働いて生計を営む権利、移動と表現の自由の権利、性と生殖に関する権利など、さまざまな人権を侵害していると報告書は言い添えた。

これに対してタリバンは声明の中で、国連の批判は「事実無根」だと反論。「西側の観点からアフガニスタンを評価しようとするのは誤りだ」と強調する。

しかしアフガニスタンからの報告は、タリバンの女性に対する抑圧が自殺未遂の急増につながっていることをうかがわせる。

CNNが取材した16歳の女性は、電池の希硫酸を飲んでタリバンの抑圧から逃れようとした。女子の中等教育が禁止され、自宅で何カ月も過ごすうちに「絶望感にさいなまれた」と話している。

国連報告書によると、人や動物のイメージを公の場に展示することも「非イスラム的」とみなされる。

それを理由に広告は撤去され、商店のマネキンは顔が覆い隠された。不発弾などの危険物について、子どもやあまり読み書きができない人に注意を喚起する目的で非営利組織(NGO)が制作した掲示物から人の画像を削除するよう指示されたケースもあるという。

広告の一部が隠された美容院の前を歩く女性=カブール/Bernat Armangue/AP/File
広告の一部が隠された美容院の前を歩く女性=カブール/Bernat Armangue/AP/File

メディアは厳格に規制され、住民は監視された状態で暮らしている。

「人々のプライバシー権が侵害されている。禁止品目を探す目的でスマートフォンや車を捜索され、モスクへの出席を記録されたり、公共の場で家族関係の証明書提示を要求されたりしている」(報告書)

タリバンは6月にカタールで2日間にわたって開かれた会合で国連高官や各国の代表と会談した。しかしアフガンの女性が排除されたことをめぐり、人権団体から批判が噴出した。

会合後の記者会見で国連のローズマリー・ディカルロ政務平和構築担当事務次長は、「率直」かつ「有意義」な対話だったと評価。会合ではアフガンの女性と市民社会に関する懸念や見解を中心に話し合われたと語った。

アフガニスタンに関する国連会合がドーハで開かれたのはこれで3回目だったが、タリバンが出席したのは初めてだった。

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