奈良公園の鹿救え、「食べられる」紙袋開発 ビニール袋の代替に
(CNN) 日本の観光名所、奈良に拠点を置く1人の起業家が、従来のビニール製のものに代わる手提げ用の袋を開発した。奈良公園に生息する鹿を救うための取り組みだ。
土産物の卸売業を手掛ける「ならイズム」の松川英朗氏はCNNの取材に答え、昨年、奈良公園の鹿がビニール袋を食べて相次ぎ死んでいるという話を聞いたと話す。奈良のシンボルであるシカを守るため、何かしたかったという。
奈良公園には天然記念物に指定された鹿が1000頭ほど生息しており、訪れる多くの観光客からえさをもらっている。これらの鹿については神の使いとする言い伝えも残る。
しかし昨年7月、地元の愛護団体が死んだ鹿9頭の胃の中からビニール袋が見つかったと報告。入園者らに対し、ビニール袋を捨てないよう呼び掛けていた。
鹿の胃の中から見つかったビニール袋/Courtesy Bunyodo
そうした呼びかけとは別の方法で問題を解決したいと考えた松川氏は、地元の紙器製造会社、デザイン会社と協力。米ぬかと、牛乳パック由来の再生パルプを使った紙を開発し「鹿紙(しかがみ)」と名付けた。
松川氏によれば精米時にほとんど捨てられるとされる米ぬかの利用は、廃棄物の削減にも寄与するものだという。
鹿紙を検査したところ、鹿にとって害がないことを示すデータはないものの、人間が食べても害はないとの結果が出たと、松川氏は笑みを浮かべて話した。
「奈良」の文字と鹿のイラストがデザインされた「鹿紙」/Courtesy Bunyodo
鹿紙はその後、地元の銀行と東大寺が4000~5000枚を1枚100円で買い取り、試験的に使用している。使用する企業が増えれば価格は下がる見通しで、松川氏はいずれ街中のビニール袋にとって代わる存在になってほしいと期待を寄せる。
ビニール袋を食べて死ぬ鹿が相次ぐというニュースは痛ましいものだったが、鹿紙でそうした事態を防ぐことができれば、鹿を名物とする奈良のブランドイメージも守られると、松川氏は語った。