相次ぐ火災で浮き彫り、クルーズ業界の現実とは
エンジン火災が起きれば多くの場合、トライアンフのように船内が完全に停電するほか、食事や水が不足し、空調も冷蔵庫もストップする。エンジンが停止すれば船体の安定が保てなくなり、海が荒れれば大揺れして負傷者が出る恐れもある。曳航に何日もかかればこうした状況は悪化の一途をたどる。
現代のクルーズ船は、10~15階建ての構造を持ち、3000~4000人の乗客を乗せて大量の電力を消費する。
主電源を失った場合、補助電源があったとしても、供給できる量は必要量のごく一部のみ。トライアンフにも米沿岸警備隊が発電機を届けたが、ほとんど焼け石に水状態だった。
クルーズ業界は旅行代金が手頃になって一般の旅行者にも手が届きやすくなり、新規参入が相次いでいるという事情もある。2010年末時点の客室数は業界全体で21万5000室。そのほぼ半数をカーニバル社の系列が占める。
業界団体によれば、02年から11年にかけて乗船した乗員乗客延べ2億2300万人のうち、海上での死者は28人にとどまり、安全性は極めて高いという。