アマゾンに世界一大きな声で求愛する鳥、大音量にメスもドン引き?
(CNN) 鳥類といえば大抵は美しいさえずり声でメスを引き付けて求愛する。ところがブラジルのアマゾンに生息するスズドリはその限りではない。メスの眼前で耳をつんざくような大音響の鳴き声を上げるので、求愛は必ずしもうまくいかない。
米マサチューセッツ大学アマースト校などの研究チームが、恐らく世界一大きいと思われるその鳴き声を観測し、科学誌「カレント・バイオロジー」に発表した。
スズドリのオスの鳴き声は最高で125デシベル。これは「痛みを感じ始める」音量といわれ、削岩機の音や8車線の幹線道路の騒音を上回る。
この大音響は、スズドリの餌のとり方と関係がある。スズドリは果実を丸ごとついばんで食べ、1日がかりで消化して種を吐き出す習性がある。
くちばしは果実を丸ごとのみ込めるよう、90度を超す角度で開くことができ、これがトランペットなどの金管楽器の広がった先端のような役割を果たして音を増幅させる。これでエネルギーを伝える効率も高くなり、オスはこの楽器のような構造を利用して大音響で求愛していた。
ただし研究チームの観察では、メスはこのさえずりを聴いて近付いては来るものの、大音響を喜んでいるようには見えなかったという。
ほかの鳥の場合、メスが近付いてくると求愛行動が控え目になるのが普通だが、スズドリのオスの場合はメスが近付いてくるとさらに音量を数デシベル上げていた。この音量がメスの聴力にダメージを与えている可能性もある。
今回のような形でスズドリの観察が行われたのは初めて。その独特の生態について詳しく調べるためにはさらなる研究が必要とされる。しかし研究チームが観察を行ったアマゾンの生息地は、20年以内に失われてしまう恐れがあると研究者は危惧する。
スズドリはブラジルのアマゾン北部に生息しているが、この地域では乾期の1月~3月にかけて焼き畑農業が行われる。研究チームは農家が放った火が道路を越え、スズドリが生息する山頂付近に達する様子を目撃したという。
「森の中の同じような場所が、既に何トンも何トンも消滅した」「それで失ったものは計り知れない」と研究者は指摘する。
アマゾンは独特の多様な生態系をもち、新種の植物や動物が推定2日ごとに発見される。アマゾンに生息するスズドリなど何百万種もの生物は、絶え間ない生息地の減少によって脅かされている。