街の中心部に野生環境を、各地で進む「都市の再野生化」

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街中にある小さな森には動物や植物が引き寄せられる/IVN Natuureducatie

街中にある小さな森には動物や植物が引き寄せられる/IVN Natuureducatie

ペトレリ氏によれば、都市の生態系回復により考えられるメリットには、気候変動に対する耐性強化や環境汚染の減少、失われた生物多様性の回復、住民の健康促進などがあるという。

ペトレリ氏の話では、都市の再野生化は「比較的新しい」運動で、思い切ってこうした方向に舵(かじ)を切った都市は一握りだという。シンガポールでは野生の生態系を育む「スーパーツリー」や緑の回廊が建設された。ドイツでは3つの街で、野生生物の生息地を自生させるための区画を設ける計画が進められている。

英国のノッティンガムでは、さらに大胆な再生事業案が出された。当初の案では、繁華街にある荒廃したショッピングモールが、林や天然牧草地に囲まれた都会のオアシスに生まれ変わる予定だった。地元議会は現在、著名な設計者トーマス・ヘザーウィック氏と協力して、街を広大な「緑の中心地」に再開発し、モールにも緑を生い茂らせる修正案を推し進めている。

「グリーン高級地区開発」は避ける

ロンドンでも野心的な試みがいくつも進められ、市長直属の「ロンドン再野生化タスクフォース」が仲介となって、互いに補完し合う数十の独立したプロジェクトを支援している。地元当局や活動家の尽力で数世紀ぶりにビーバーがロンドンに呼び戻された他、新たに林地が開発され、チョウの生息地が設けられた。

次の段階としては、管理された草地を野生の牧草地に転換してミツバチやチョウや野生の花々のために数キロにわたる緑の幹線道路を作り、放牧した家畜の群れを呼び戻してロンドン郊外の生態系を形成することなどが考えられる。だが、こうした未来はトップダウンとボトムアップ、両方向から行われる。

「広い空間を必要とする大がかりなプロジェクトと同時に、一般市民の玄関口でできるような小規模な取り組みをロンドン全域で推し進めたい」。こう語るのは、ロンドン市のシャーリー・ロドリゲス環境担当副市長だ。こうした取り組みには、地元近隣の野生環境レベルを記録して、最優先に保護すべき生物種を特定することも含まれる。

このような計画は道楽ではない。ロドリゲス氏は、国際都市が大なり小なりこうした計画を進めるのは当然の流れだと言う。「再野生化により生態系が回復し、地域内の多種多様な生物種の種類や数が増えることは分かっている。それだけでなく、よりグリーンで健全な街を作り、気候変動の影響に対する回復力を向上させるという広い役割も担っている。その上、ロンドン市民の心身の健康も改善される」

ZSLは都市の野生化計画がたびたび直面する問題を挙げている。大規模な計画には公的資金が必要だが、厳しい時代には予算も不足する。野生の土地を何もせず放っておけば、外来種が侵入して生態系に支障をきたす危険もある。

プロジェクトを継続させるには地元住民の同意も欠かせない。対象地域から住民を追い出す「グリーン高級地区開発」も避けなければならない。再野生化に挑戦するには、殺虫剤や人工芝といった有害な慣習にも対処しなくてはならない。「より厳格な法規制を敷いて、都市の自然回復の努力を妨げるような行動の拡散を防止する必要がある」とペトレリ氏も言う。

だが、こうした活動は勢いを増しつつある。ブライフロト氏はタイニー・フォレスト計画と並行して実施する補助計画として、学校での緑化活動や公共スペースでの食物栽培、持続可能な水管理の実験などを挙げている。すでにタイニー・フォレストはキュラソー島からパキスタンまで10カ国にネットワークを広げており、現在は地元の学校と密に協力しながら、次の世代の意識向上に力を入れている。

「生態系の回復に挑戦する、より大きな運動、再野生化による再生活動の一員になった気分だ」(ブライフロト氏)

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