バーチャルな衣服、ごみ問題解決の一助に
ロンドン(CNN) ファッションの持つ刹那(せつな)的な性質は、ブロックチェーン(分散型台帳)技術とは相性が悪いようにみえるかもしれない。しかし、ファッション業界は、廃棄物を削減し、業界を未来へと推し進めるため、ブロックチェーンや他のデジタルツールを活用する方法を模索している。
イタリアのラブラコ社はファッションブランドなどと提携し、急成長している「フィジタル」のファッション市場でコレクションのデジタル化を進めている。そこでは、消費者は物理的な衣服とデジタルの「双子」の衣服を購入する。デジタルの衣服は収集したり、メタバースなどの仮想空間でアバター(分身)に着せたりするようデザインされている。
ラブラコは2016年に、ロレンツォ・アルブリギさんと、エリアナ・クオさんが創業した。高級ファッションブランドの経験がある2人は、業界の持続可能性の向上や、廃棄物を削減する方法で衣服をデザイン・制作する「サーキュラーファッション」の推進に目を向けていた。
2人は19年に「サーキュラーファッションサミット」を立ち上げたほか、21年には小売業の「H&M」と協力してブロックチェーンを使った衣服のレンタルサービスを開始した。
ファッションをデジタル空間へと押し出すことで、サーキュラーファッションの取り組みに必要なデータを生み出すことができるという。
ラブラコでは、物理的な衣服とデジタルの衣服は販売後もペアとなっており、物理的な衣服が転売された場合、デジタルの衣服も新しい所有者の「デジタルウォレット」に転送される。ブロックチェーン技術の透明性によって、新しい所有者は真正性を確認することができるほか、衣服の作成者は販売後の動きを追跡することが可能となる。
繊維とファッションの業界では年間約9200万トンの廃棄物が発生しているが、デジタルファッションはこうした数字を削減する役割を担えるかもしれない。
クオさんによれば、デジタル空間は物理空間の試験場として利用することができる。例えば、デザイナーがメタバースで10種類の色の衣服を発表し、その販売データを基にして、現実の世界ではどの色を使うのか決めることができる。
バーチャルの衣服を試着することで現実世界で返却される服の量を減らすこともできるという。ファッションショーをバーチャル空間で行うことで移動の必要も減らせる。いずれの方法も、業界の二酸化炭素排出量を削減できる可能性がありそうだ。
こうした新しい方法が普及するためには、デザイナーにインセンティブ(動機付け)を与えることが重要だとアルブリギさんは言う。フィジタルのやり方なら、ブロックチェーンの透明性により、衣服がその耐用期間を通じて再版されれば、ブランド側はロイヤルティー(権利使用料)を受け取ることができるようになる。これにより、生産量を減らしながら収入を増やせるようになる。
アルブリギさんは「全く新しい産業の始まりだ」と力を込めた。