クジラが気候変動対策で重要な役割、炭素を貯蔵 米研究
(CNN) 世界の大型クジラは海洋や土壌、森林と同様に、温暖化効果を持つ炭素排出物を隔離・貯蔵することで人類を気候危機から救うことができる――。米アラスカ大学サウスイースト校などの研究者がそんな論文を発表した。
論文は専門誌「トレンズ・イン・エコロジー&エボリューション」に15日発表された。
研究チームはこの中で、クジラは重要でありながら見落とされがちな炭素吸収源だと示唆。重さ150トンに上る巨大な体のおかげで、クジラはより小さな動物に比べ効果的に炭素を貯蔵できる。
クジラは長生きで100歳を超える個体もいることから、「海で最大規模の安定した炭素プール(貯蔵庫)」になり得るという。死んだ場合も死骸が海底に沈殿し、体内に蓄積された炭素を閉じ込めておくことができる。
さらに間接的な炭素吸収方法として、排せつ物を通じた吸収も挙げられる。クジラの糞(ふん)には栄養が豊富に含まれていて、植物プランクトンがこれを摂取することがある。植物プランクトンは成長に従って二酸化炭素を吸収するほか、死ぬとやはり死骸が海底に沈み、わずかながら炭素を除去する。
こうした炭素隔離のプロセスが気候変動の緩和につながるという。隔離されなければ今後数百年にわたって地球を温暖化させる要因となる炭素を閉じ込めておくことができるためだ。
ただ、クジラは絶滅の危機にあり、大型クジラ13種のうち6種が絶滅危惧種または危急種に分類されている。個体数減少の要因としては産業捕鯨や、漁具に絡まる被害、気候変動の影響による餌の変化、騒音汚染などがある。
論文の筆頭著者を務めたアラスカ大学サウスイースト校の研究者、ハイディ・パーソン氏は、クジラを保護することで生物多様性の危機だけでなく人為的な気候変動にも歯止めを掛けることにつながり、二重の利益があると指摘している。