マスク氏による政府縮小、破壊力は「解体工事の鉄球」並み 元職員が内幕語る
(CNN) 米実業家イーロン・マスク氏は、自ら率いる「政府効率化省(DOGE)」が「史上最も透明性の高い政府機関」だと主張する。これに対し、同省傘下の部署から最近退いた元職員の女性が、CNNとのインタビューで強く反論した。
メリチ・ビントン氏(44)は連邦政府のIT(情報技術)化を担当する米デジタルサービス(USDS)に勤務していたが、3月に退職した。インタビューでは、「独特のルール」に基づく「極めて秘密主義的」なDOGEの活動を目の当たりにしたと述べた。
連邦機関の仕組みをよく知らない新職員らが押し寄せ、ブルドーザー式に政府縮小を断行したと、ビントン氏は語る。業務がどのように進められていて、どんなルールや方針があるかなど、お構いなしだったという。
ビントン氏が退職後、テレビ局とのインタビューに応じたのは初めて。USDSで起きたことを、内部からの視点で語った。
USDSはオバマ政権下で、連邦政府全体のIT化推進を目的に設置された機関。ビントン氏は2021年に入局したが、トランプ政権がUSDSをDOGEに編入してから約2カ月後に退職した。
USDSの業務はそれまでずっと「非政治的」だったと、ビントン氏は強調する。
「私が政府に入ったのは、国民がもっと簡単に給付金や還付金を受け取り、税を申告できるようにしたいという動機からだった。私が見たところ、DOGEはその多くをぶち壊しにしている」「もう一度立て直すのは途方もなく難しいだろう」と話す。
「別々の2チーム」
ビントン氏によると、同氏やほかの職員らがDOGEへの編入を知ったのはトランプ氏が大統領に就任した日のことだった。トランプ氏はこの日、USDS再編の大統領令に署名した。
「だれもが愕然(がくぜん)とした。その日の夜、私たちは新たに同僚となった人たちとの面談を言い渡された」
翌日やってきたDOGEの担当者たちは仮の職員証をつけ、姓でなくファーストネームだけを名乗った。USDSの職員162人と15分ずつ面談し、「あなたが周りより特別に優れている点は何か」「局内で好ましい人物はだれか」など、奇妙な質問を投げ掛けてきた。
まもなく、USDSの中は「別々の2チームが共存する」ことが歴然となった。一つは、政府縮小という任務を統括するDOGEのチーム。もう一つが、IT化プロジェクトの息を何とか絶えさせまいと奮闘する、USDSのチームだ。
「私たちはあの15分間の面談以降、自分たちがこの先どうなるのか、よく分からずにいた。次は自分たちが解雇される番なのか。正直なところ、だれもがそれを覚悟していた」
トランプ氏就任から1カ月もたたない2月14日の午後8時、USDSの職員43人が解雇通知を受け取った。それから2週間足らずで、今度は21人が抗議のために退職した。
退職組はワイルズ大統領首席補佐官にあてた辞表を通し、「私たちは科学技術者としての自分の技能を使って、政府の基幹システムや米国民の機微情報を危険にさらしたり、重要な公共事業を解体したりしない。DOGEの活動を実行したり正当化したりするために、自分の専門知識を使わせない」と表明した。
ビントン氏は、自身の見解に政治的立場が影響している可能性を否定する。バイデン政権下でUSDSに入り、今は民主党を支持しているが、若い頃は共和党員であり、選挙では共和、民主両党の候補者に投票してきた。