アジアゾウの生息地、3分の2近く喪失 新研究
(CNN) アジアゾウの生息地が過去数百年で3分の2近く失われたことが、サイエンティフィック・リポーツ誌に27日付で掲載された研究結果から明らかになった。長年の森林伐採や農業、インフラといった人間による土地活用の拡大に原因があるという。
絶滅が危惧されるアジアゾウは同地域の13カ国で生息を確認しているが、研究者らによればゾウたちが暮らす森林や草地は1700年以降64%以上失われている。これは面積にして330万平方キロメートルに相当する。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校で教授を務める生物学者のシャーミン・デシルバ氏が主導する研究チームは、大規模な生息地の喪失によりゾウと人間が衝突する危険性が高まると指摘。互いに非対立的だった関係が、反目し合う暴力的なものにとって代わる恐れがあるとの懸念を示した。
「状況を緩和させる必要がある」と語るデシルバ氏は、非営利団体のトップとして野生のアジアゾウとその生息地の保護に取り組んでいる。
研究によると生息地が最も大規模に減退したのは中国で、1700年から2015年にかけ生息に適した土地の94%が失われた。インドの86%減がこれに続く。
生息地が半分以下となったのはバングラデシュ、タイ、ベトナム、インドネシアのスマトラ島。ブータン、ネパール、スリランカでも相当の減少が起きている。
これらの生息地の回復は、必ずしも土地に手を付けないことを意味しないと、デシルバ氏は指摘。むしろ地元の農業従事者や先住民のコミュニティーに関する知見を広めることが必要になるという。同氏によれば、こうした人々は現行の経済システムの導入を受けてしばしばその存在意義を過小評価されている。
研究者らは、ゾウの生息地喪失に拍車がかかった1700年が欧州諸国によるアジアの植民地化の拡大時期に重なると分析。この間、森林伐採や道路の建設、資源の採取が進み、従来なら野生動物が暮らしていたとみられる土地でも農業経営が盛んに行われるようになった。
こうした産業の変革は1950年代にも「第2波」が起こり、タイや中国などでの大規模な喪失につながったという。
またインド東部のアッサム州では80年代に人間とゾウが衝突する事案が激増したが、これは地形に占める森林の割合が3~4割未満に落ち込んだ時期と合致すると、研究では述べている。