(CNN) フンガトンガ・フンガハーパイ火山で発生した15日の噴火は極めて大規模だったため、その様子を捉えるには宇宙からの観測が最良の方法となった。
この噴火で特筆すべきなのは、火山灰からなる噴煙や大気を伝わる衝撃波、一連の津波が同時に形成された点だ。
詳細はまだ明らかになっておらず、噴火の状況は今後さらに変化する可能性があるが、今回の現象やその発生理由を理解する助けとなりうる情報がいくつか浮上している。
シェーン・クローニン氏
まずは噴火について見ていこう。世界全体ではこの規模の噴火は10年に1度程度の頻度で発生しているが、この火山でこれほどの規模の噴火が起きることはめったにない。放射性炭素年代測定法で過去の噴火の火山灰や堆積(たいせき)物を調べた私の研究を基にすると、今回の噴火はフンガトンガ・フンガハーパイ火山にとって1000年に1度の出来事だと思われる。
同火山は約900~1000年をかけてマグマで満たされ、それが冷却して結晶化が始まり、マグマの内部でガスの圧力が大量に発生する。ガスの圧力が蓄積し始めると、マグマは不安定になる。身近な例としてはシャンパンの瓶に泡を入れすぎ、最終的に瓶が割れてしまうケースを考えればいい。
マグマの圧力が高まるにつれ、マグマの上の冷たく湿った岩石が壊れ、たまっていた圧力が突然解放される。15日の噴火では岩石や水、マグマが上空30キロの高さまで噴出し、そのエネルギーは膨大なものだった。その後30分以内に、宇宙からも見える直径350キロ超の巨大な雲が発生し、トンガの複数の島に灰を降らせた。
次に津波に関してだが、津波は地震によって起きるケースが最も多い。プレートが海底で動くと、大量の水を移動させて巨大な波を引き起こす。それでは、太平洋南西部の海中に一部沈んでいた火山は、どのようにして米西岸に届く津波を発生させるほどのエネルギーを生み出したのだろうか。
津波を引き起こした正確な原因はまだ不明だが、少なくとも2つの可能性がある。一つ目として考えられるのは、最初の爆発の膨張力との関係だ。15日の噴火ではマグマの噴出が圧力を突然解放し、宇宙からでも見える超音速の気圧の波を引き起こした。
こうした気圧の波はニュージーランドまで2000キロあまり伝わり、遠く英国やフィンランドでも観測された。
空気の波と最初の爆風は海面に影響を与えて巨大な波を引き起こし、トンガのトンガタプ島と首都ヌクアロファを直撃。噴火初期の動画には、噴煙で空が暗くなる前に波が道路に流れ込む様子が捉えられている。
津波の原因としてもう一つありうるのは、火山内部で大きな変化が生じた可能性だ。人工衛星のレーダーが捉えた噴火後の画像からは、これまで海面の上に出ていた火山の中央部が波の下に姿を消したことが分かる。これは、噴火発生に伴いマグマが急激に失われ、火山の中央部が崩壊してカルデラ(空っぽのくぼ地)ができた可能性が高いことを示している。この崩壊で水が押し出されて津波が発生し、太平洋を越えて米カリフォルニア州まで広がった可能性がある。
今回の噴火は発生した雷の量という点でも驚異的だった。これは空気中を飛ぶ非常に細かな火山「灰」の粒子の静電相互作用によって引き起こされたものだ。これについて気象衛星や雷の研究者は観測史上もっとも重要な現象の一つとの見方を示しており、落雷の数はピーク時には15分間で6万3000回に上った。
この火山の過去の噴火には多くのフェーズがあり(その一例が新しい島を誕生させた2014年の噴火だ)、今後数日から数週間の間にさらなる爆発が起きる可能性もある。ただし緩和要因としてひとつ挙げられるのは、いまはカルデラが水中にあるため、噴火が大気中に到達しにくくなっている点だ。
これは、より海底型の爆発的噴火への移行を意味する可能性がある。これにより大気への影響は小さくなるだろうが、依然として津波リスクは高いままの可能性があり、太平洋沿岸地域に住む人は今後数週間にわたって警戒を維持する必要がある。
我々は以前の研究でこの火山の噴火の威力の重要性を強調していたが、日単位や時間単位で予測するのはまだ不可能だ。特にこれほど沖合にある火山の場合、電力はなく、環境が絶えずダイナミックに変化することから、予測はとりわけ難しい。唯一可能なのは人工衛星を通じた観測手法だが、それにしても数分前にトンガの住民に警告を与えるのがせいぜいのところだ。
大規模噴火には必ず新たな驚きがあるとはよく言われることだ。今回の噴火は火山が津波を引き起こす大きな要因になることを明確に示した。トンガはほとんどの国から遠く離れた場所にあるが、同国の火山は世界中の低地国に脅威を及ぼしうる。
今後数日から数週間の間に、この魅力的でありながら危険な火山や海底カルデラの危険性についてさらに多くのことが分かるだろう。初期報道からは、トンガが津波による甚大な被害を受け、多くの遠隔地と連絡が付かない状況がうかがえる。いまはトンガの全ての人が無事であることを祈るばかりだ。
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シェーン・クローニン氏はニュージーランド・オークランド大学教授(火山学)。活火山の化学的・物理的な性質について200以上の科学論文を発表しており、アジア太平洋をはじめとする地域で活火山が及ぼす危険性について理解を試みています。記事の内容は同氏個人の見解です。