撮影現場の銃誤射、米俳優ボールドウィン氏に対する訴追棄却 検察の証拠開示に不備
(CNN) 米西部劇映画の撮影現場で2021年に起きた銃誤射による死亡事件で、過失致死罪に問われていた俳優アレック・ボールドウィン氏に対する訴追が12日、棄却された。裁判を担当する判事は、検察が弁護側に適切に証拠を開示しなかったとの判断を下した。
ボールドウィン氏の弁護士は、男性1人が事件に関係するとされる弾薬の箱を捜査員に届けたことを州捜査当局が適切に開示していなかったとして、訴追棄却を申し立てていた。
判事は陪審を帰宅させ、数時間にわたり証言を聴取した。その後現地時間午後4時ごろ、弁護側を支持する判断を下し、確定的に訴えを棄却した。これは二度と訴追できないことを意味する。
判事は「州による証拠開示の違反は、陪審裁判に不要かつ取り返しの付かない遅れをもたらした」と判示。「司法制度の完全性と司法の効率的な運営を確保するため、確定力を伴う訴えの棄却が正当化される。訴追棄却の申し立てを認める」と述べた。
この判断が言い渡されると、ボールドウィン氏は涙をこぼす場面が見られ、すぐさま妻のヒラリアさんと抱擁を交わした。
事件は21年10月21日、ニューメキシコ州で行われていた西部劇映画「ラスト」の撮影現場で発生し、撮影監督のハンナ・ハッチンスさんが死亡した。ボールドウィン氏は無罪を主張。有罪になれば最大1年半の禁錮を言い渡される可能性があった。
ボールドウィン氏が体の反対側のホルスターから銃を抜く「クロスドロー」を練習していたところ、小道具の銃から実弾が発射され、ハッチンスさんが死亡、ジョエル・ソウザ監督が負傷した。
検察は10日の冒頭陳述で、ボールドウィン氏は小道具の銃をハッチンスさんに向けて引き金を引くことで、「銃器の安全にかかわる鉄則」を破ったと主張。一方、弁護側は小道具の銃への実弾装塡(そうてん)を許可し、ボールドウィン氏の手に渡る前の安全確保を怠った銃器係や助監督に責任があると主張していた。