各争点に対する立場
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた1月、ホワイトハウスは新型コロナウイルスの対策チームを編成した。そのメンバーには、国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏や政府のHIV・エイズ対策で調整官を務めるデボラ・バークス氏が含まれていた。
アザー厚生長官は米国の公衆衛生に対する緊急事態を宣言した。2月になり米国は新型コロナウイルスの感染拡大抑止に向けて厳格な移動制限を実施し始めた。その中には米国に到着する前の14日間に中国を訪問した外国人の入国を一時的に禁止するというものも含まれていた。
トランプ政権の保健当局者は米国民に対し新型コロナウイルスの感染拡大抑止に向けた社会的距離の確保の実施やマスクの着用を促した。しかし、トランプ氏自身は公共の場でマスクを着用することに後ろ向きだった。トランプ氏は全米でマスクの着用を義務化することが必要だとは考えていないと述べていたが、7月に入り、「マスクに大賛成」であり、「マスクは良いものだと考えている」と語った。
トランプ氏は検査数の引き上げの必要性を重要視しない姿勢を繰り返し示しており、6月にオクラホマ州タルサで行われた集会で支持者に対して、新型コロナウイルスの検査は「諸刃(もろは)の剣」だと指摘。トランプ氏は集会で、「それだけの検査を行えば、より多くの人々が見つかる。より多くの患者が見つかる。そこで、私は『検査のペースを落としてくれ、頼むよ』と言ったんだ」と述べた。
警察改革
トランプ氏は、米国における制度的な人種差別と警察の暴力に対する抗議デモが全米に広がるなか、自分自身について「法と秩序の大統領」と形容した。トランプ氏は警察予算の削減に対する取り組みをこき下ろしたほか、警察はその仕事について敬意を示されるべきとの見方を示した。
トランプ氏は6月、警察の暴力に対する非難の声に対処するために穏当な改革を実施する大統領令に署名した。大統領令の中には、過剰な暴力を行使して解雇されたり有罪となったりした警官についての情報を提出することを促す追跡プログラムなどが含まれる。
司法省もまた、殺傷力のある実力行使が認めらるケースを除き、実力の行使や緊張緩和の方針、首絞めの禁止に関して認定を受けた警察に対し、連邦補助金を振り分けるようにする。連邦政府の保健当局者とも協力し、心の健康やホームレスに関する通報に対応するためにソーシャルワーカーと警官をペアにするプログラムの訓練を増やす。
トランプ政権下の司法省の政治的指導層は、凶悪犯罪の全国的な増加の根絶と、オバマ政権下で敵視されたとトランプ政権が主張する現場の警察官たちの士気向上を重視した警察活動の方針を支持している。
気候変動
2015年に結ばれた地球温暖化対策のための「パリ協定」から米国が撤退するというトランプ氏の決断は気候変動に対応する国際社会にとって大きな打撃となった。パリ協定からの脱退するという決断は、米国は気候変動に対する世界的な戦いを主導する立場を取らないという世界の残りの国々に対するメッセージだった。米国が法的に脱退可能となるのは最も早くて2020年となる。
トランプ政権の環境保護局(EPA)局長は、気候変動は信じているが、最優先事項ではないと述べた。
トランプ政権はユタ州の2つの国定記念物について指定区域の縮小を行った。トランプ政権はまた、石油やガスの掘削に向けて、国立北極圏野生生物保護区(ANWR)や、東部や太平洋岸の沖合の開放を進めている。
トランプ政権下で、EPAは今後、石油・ガス企業に対し、新しい井戸やタンク、パイプラインからメタンガスが漏れるのを検出するための監視装置の導入を求めない方針を明らかにした。
経済
トランプ氏が大統領職に就いて達成した主要な経済政策は2017年の減税で、個人と企業の両方の税率を大きく引き下げた。しかし、このことで2019会計年度の連邦予算は1兆ドル近くの赤字となり、トランプ氏が選挙公約として掲げた財政赤字の削減と任期2期目の終わりまでの政府債務の完済は実現が難しそうだ。
減税はまた、記録破りの株式市場の上昇につながった。株式市場はトランプ氏のお気に入りの経済指標のひとつだ。企業幹部は節税分で自社株買いを行い、株価が押し上げられ、投資家が恩恵を被った。
トランプ政権下で労働市場は堅調で、失業率は50年ぶりの低水準を記録した。
米経済の見通しは依然として安定しているが、トランプ氏は、欧州連合(EU)といった同盟関係にある国々に対して関税をかけるなどの予測不能な通商上の行動を繰り返し世界経済の減速につながっている。トランプ氏はまた、中国と2年間にわたる貿易戦争を繰り広げており、米国の農家や輸入業者、製造業者にとって打撃となる報復関税を何度も課している。
トランプ氏は2017年に大統領職に就くとすぐ、オバマ政権時代の多国間による環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退を表明した。トランプ氏は2国間交渉を好み、2019年には日本と新たな貿易協定を結んだ。しかし、日米貿易協定は牧場経営者や農家にとってTPPよりも優れたものというわけではなかった。
トランプ政権はカナダとメキシコとの間で結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も実施した。各国は貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」で合意した。
教育
トランプ氏は大統領として学生ローン問題に取り組むことを明らかにしている。教育省は2019年11月、大統領令を受けて、大学卒業生の収入と負債の水準に関する新たなデータを公表した。これは学生が大学を選ぶ前に借り入れについてより多くの情報が得られるように支援することが目的だった。
ホワイトハウスはまた、障害のある兵役経験者に対する債務の自動的な免除を実施したほか、議会に対しては借入金に上限を設けるよう促している。これとは対照的に、公務員に対する学生ローン債務の自動的な免除については停止するよう繰り返し提案しているが、議会はこうした試みを拒否している。
トランプ政権は、学生がチャータースクールを含む学区外の公立校や私立校への入学で利用できる奨学金「EFS」に対する税額控除を推進している。
トランプ政権は、学校における人種的な多様性の促進や、公立校でトランスジェンダーの生徒がトイレやその他の施設について自認するジェンダーに基づいて利用できるようにする保護策といったオバマ政権時代の指針のいくつかを撤回した。トランプ政権はまた、営利目的の大学に対して説明責任を果たさせることを目的としている2つの指針を後退させた。
銃による暴力
トランプ氏は大統領就任中に銃乱射事件が相次ぎ発生したことを受けて、身元調査の拡大といった銃の暴力に対する取り組みを行うことを約束した。しかし、詳細は曖昧(あいまい)で、トランプ氏は心の健康や憎悪が根本的な問題だと繰り返し言及している。
トランプ氏は2017年にラスベガスで起きた銃乱射事件の後、司法省に対して、半自動小銃を全自動小銃のように高速連射可能にする装置「バンプストック」の禁止を指示した。この禁止令は2019年3月に施行された。
トランプ氏は州レベルでの「レッドフラッグ法」を支持している。レッドフラッグ法は、危険な兆候に気づいた人が裁判所に対して、不安定な状態にある人に介入し一時的に銃器を利用できないように命令を求めることができるというもの。
医療保険
トランプ氏は前回の大統領選のときから医療保険制度改革(オバマケア)に反対の姿勢を示してきた。共和党が過半数を押さえた連邦議会でオバマケアの撤廃には失敗したが、トランプ氏はオバマケア見直しのための大統領令を複数回出した。その中には、補償の範囲を小さくし給付金を減らすような代替案への移行を容易にするものも含まれていた。
トランプ政権はまた、裁判を通じてオバマケアの無効化を目指す取り組みも行っている。政権はオバマケアを擁護しない方針を決め、連邦議会が個人の加入義務を事実上廃止したためオバマケアは違憲だと主張する共和党系の州司法長官と組むことにした。裁判は、地方裁判所が2018年12月に共和党陣営に有利な判断を下した後、上訴裁判所が審理を進めている。
歴史的な動きのなかで、トランプ政権は各州が一定のメディケイド(低所得者向け公的医療保険)の利用者に対して就労要件を課すことを認めている。だが、地方裁判所は複数の州でこうした動きを阻止し、また別の州では司法で審理が進む間の差し止めを命じた。
トランプ氏は薬価の引き下げを約束し、2018年にそのため青写真を発表した。トランプ氏は長年にわたる共和党員の考え方に反し、特にカナダからの薬品の輸入を推進しているほか、米国での薬価を他の先進国での薬価と結びつけるよう求めている。
しかし、トランプ氏の取り組みのいくつかは暗礁に乗り上げている。例えば、テレビ広告に薬の値段を明示するよう製薬会社に求めたが、これは2019年夏に連邦裁判所によって無効とされた。トランプ政権は全体的な医療費削減という取り組みに向けて、病院に対して医療保険会社と非公開で交渉した保険料について2021年から公表するよう求めている。この要請を阻止しようと、主要な病院の連合が訴訟を起こしている。
移民
トランプ氏は2016年の大統領選で米国とメキシコとの国境の間に壁を建設することを提案し、大統領としての移民政策の信条とした。
トランプ氏は大統領に就任後、大統領令を発令し、イスラム教徒が多数を占める一部の国からの入国を90日間停止することを指示した。この大統領令は幾度かの法廷闘争をへて、最高裁によって支持された。
トランプ政権は2018年、「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策を発表。違法に国境を越えた成人を刑事訴追したことで、結果として、両親が拘束され、国境付近で何千組もの家族が離れ離れとなった。裁判所の指示で、政府は一部の離れ離れとなった子どもについて身元を特定して家族と再会させなくてはならない。
トランプ氏は能力を基にした移民制度を提案。グリーンカード(永住権)の保有者にポイント制を導入する一方、配偶者や未成年に対するスポンサーシップを制限する内容だった。
トランプ大統領はまた、オバマ政権時代に導入された、子ども時代に入国した不法滞在の移民に対する保護措置を公式に撤廃したが、この決定については最高裁で争われた。
※本ページは、2020年8月12日時点のCNN.comの「Donald Trump 2020: Polls, news and on the issues」を翻訳し、掲載しています。最新の情報はCNN.comをご覧ください。