昨年、世界の建築界では、アフリカで最も高いビルの完成、欧州初の水中レストランの開店、ノートルダム大聖堂の火災、新たな超高層ビルの建設、I・M・ペイやシーザー・ペリといった著名な建築家の死など、重大事件が相次いだ。
今回は、博物館、超高層ビルから穴の開いたホテルまで、CNN Styleが待ち焦がれた2020年開業・完成予定の建築プロジェクトを紹介する。
バンクーバーハウス(バンクーバー、カナダ)
BIG / Luxigon
バンクーバーハウスは、三角形の底部から長方形の上部にかけてねじれており、遠くから見ると建築の法則に逆らっているように見える。
高さ約150メートルのこの高層ビルを設計したのは、デンマーク人の建築家ビャルケ・インゲルス氏だ。最近、コペンハーゲンの発電所の屋上にスキー場を作ってしまったインゲルス氏らしい奇抜なデザインだが、バンクーバーの中心部には高層ビルの土地専有面積を制限するさまざまな制約や規制があり、それらに対応するための「奇策」ともいえる。
南京証大ヒマラヤセンター(南京市、中国)
MAD Architects
中国の古都南京で進む広さ約9.3ヘクタールのこの開発プロジェクトは、中国の伝統絵画「山水画」からヒントを得ており、設計を手掛けた中国人建築家、馬岩松(マー・ヤンソン)氏が掲げる「山水都市」というコンセプトを実現した、これまでで最も野心的なプロジェクトと言えるだろう。
この複合施設内の各高層ビルが1枚ずつ形の異なる複数の白い「ひれ」に覆われ、まるで雪を頂く山のように見える。
パワーハウス・テレマーク(ポルスグルン、ノルウェー)
Bloomimages / Snøhetta
国際的な建築事務所スノヘッタが設計したパワーハウス・テレマークは、ポルスグルン川沿いに位置するエネルギーポジティブ(エネルギーの生産量が消費量を上回る)な建物だ。
この滑らかで光沢のある建物は、ほぼ全体が太陽電池で覆われ、すべてが二酸化炭素排出量を考慮して作られている。例えば、建物は太陽エネルギーの吸収量を最大化するためにダイヤモンドの形をしており、さらに建材には地元で取り壊された建物の廃材が再利用されている。
ニューミュージアム・フォー・ウェスタンオーストラリア(パース、オーストラリア)
Peter Bennetts / Hassell / OMA
この博物館の建設予定地の周りには多くの歴史的建造物があり、設計を担当した建築設計事務所のハッセルとOMAは、周りの歴史的遺産を保護しつつ、21世紀の博物館を建設するという難しい仕事を任された。その結果、周囲の既存建築物を引き立たせ、相互に作用し、包み込む、見事な現代建築が完成した。
大エジプト博物館(カイロ、エジプト)
Mohamed-El-Shahed/AFP/Getty Images
総工費10億ドル(約1100億円)の大エジプト博物館は、これまで再三にわたり完成を先延ばしされ、2年前の完成が待たれる建築のリストにも名を連ねていたが、いまだ開業に至っていない。しかし、2020年はついに「開業の年」となりそうだ。
同博物館は、2011年のエジプト革命後、低迷する同国の観光産業を復興させる取り組みの象徴であり、15年以上前に初めて公開された全面ガラス張りの建物からは、大ピラミッドやギザ台地が一望できる。
ベルリン・ブランデンブルク国際空港(ベルリン・ドイツ)
Günter Wicker / Flughafen Berlin
ベルリンで新たに建設中のブランデンブルク国際空港への期待度がさほど高くないのは、完成が約10年も遅れているからではなく、そのデザインが原因だろう。
しかし、首都ベルリンの新しいハブ空港が、長年にわたる困難の末、2020年にようやくオープンする予定だ。同空港は過去にも開業が延期されたことがある(当初は2011年10月に開業予定だった)が、最近発表された今年10月の開業については確実視されているようだ。
オーパス(ドバイ、UAE)
Laurian Ghinitoiu / Zaha Hadid Architects
2016年に急逝した世界的建築家ザハ・ハディッド氏が設計した大型複合施設「オーパス」は、一見、いびつな形の穴が開いた前面がガラス張りの立方体に見えるが、近くで見ると2棟の高層ビルが、底部は4階建てのアトリウムで、上階は歩道橋でつながっているのが分かる。
同施設には、ハディッド氏が内装のデザインを手掛けたブティックホテルや、事務所スペース、レストランなどが入る予定だ。
1000Trees(上海、中国)
Qingyan Zhu / Heatherwick Studio
1000Treesは、英国人建築家トーマス・ヘザウィック氏が設計を手掛けた、上海の川沿いに位置する広さ約30万平米の広大な都市型複合施設だ。プロジェクト名にほのめかされているように、施設内には草木が植えられた大きな柱が数多く設置されている。
M+博物館(香港特別行政区、中国)
Courtesy of Herzog & de Meuron / West Kowloon Cultural District Authority
香港のビクトリアハーバー内の埋め立て地で開発が進む西九文化区に今年オープンするM+博物館には、アジア大陸で最も素晴らしい現代視覚芸術の数々が展示される見込みだ。
スイスの建築設計事務所ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計したこの博物館は、展示場がある水平部と、その他のすべてが入った垂直部で構成され、2つ合わせるとちょうど逆さの「T」の字に見える。
ドバイ国際博覧会のシンガポールパビリオン(ドバイ、UAE)
Singapore Pavilion, Expo 2020 Dubai
今年10月からドバイで開催される国際博覧会(EXPO 2020 DUBAI)では、世界各国が素晴らしい建築物を展示するが、中でも最も野心的なのは「アラビアの砂漠にオアシスを作る」をテーマにしたシンガポールのパビリオンだろう。
UAEに鬱蒼(うっそう)とした草木を持ち込み、木、低木、ランの花が生い茂る空中庭園を備える。また、パビリオンの設計を担当したシンガポールの建築事務所WOHAは、灌漑(かんがい)用のソーラー式海水脱塩システムを導入したり、張り出し屋根で日陰を作るなど、博覧会の開催期間中、同パビリオンにおけるエネルギーの中立性を維持できると考えている。