古代エジプトのツタンカーメン王をかたどったとみられる頭像がロンドンでオークションにかけられ、470万ポンド(約6億4000万円)で落札された。オークションを運営したクリスティーズが4日に明らかにした。頭像をめぐっては、エジプト政府が国内から盗まれたものだとしてオークションを中止するよう求めていた。
高さ約28センチのこの像には、ツタンカーメン王に似た特徴がみられる。落札者の氏名は明かされていない。
クリスティーズは競売実施の正当性を主張している/Christies
エジプト側からの抗議の声を受け、今回のオークションは大きな議論を呼んでいる。先月、同国の考古省はクリスティーズと国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対してオークションの取り下げの要請を出し、像の出自を証明する文書の提示を求めた。
さらに、ロンドンのエジプト大使館は英外務省に像の返還を求め、このオークションからエジプトの出土品などをすべて取り下げるよう呼び掛けてもいた。
一方クリスティーズは像について、1985年に独ミュンヘンの古美術商から入手したとして、その前の持ち主の名前を挙げ、所有権や輸出手続きに疑問のある物は出品していないと主張する。像は一度も調査の対象になったことはなく、エジプト当局も過去に懸念を表明してはいなかったという。像の存在自体は広く知られており、公共の場での展示も行われている。
ツタンカーメン王は紀元前1333年ごろに9歳で即位し、その治世は19歳で亡くなる同1323年ごろまで続いた。埋葬された王墓はルクソールからナイル川をはさんだ西側に位置する「王家の谷」と呼ばれる場所にあり、当時の状態を比較的よくとどめたまま発見されたことで知られている。