米ペンシルベニア州の小さな美術館がこのほど、17世紀に描かれた肖像画について、オランダの巨匠レンブラントの作品であるとの見解を表明した。この作品を巡っては、レンブラントの工房にいた別人の作とする説が唱えられていた。
同州のアレンタウン美術館によると、描画や保全に関する先進的な技術を駆使して分析した結果、同作品が間違いなくレンブラントによるものであるとの「明確な証拠」を発見したという。
若い女性の肖像を板に描いたこの油彩画は1632年の作とされ、アレンタウン美術館の所蔵となった1961年にはレンブラント本人の作品だと広く信じられていた。
Shan Kuang / Allentown Art Museum
しかし70年代に入ると、レンブラント作品の真贋(しんがん)を検証するオランダの団体が、実際にはレンブラントの助手か見習いの描いたものである公算が大きいと指摘。筆づかいの特徴や衣服の色合いに明るさが足りないことなどからレンブラント本人の作品ではないとする懐疑論が浮上した。
この後、2018年に行われた絵画の保全作業を通じ、専門家らがやはり本物のレンブラント作品であることを示す兆候を見つけたとされる。
専門家の1人によれば、これまでの修復で表面に塗られた分厚いニスの層が時間の経過とともに濃くなり、レンブラント特有の筆づかいなどを隠す結果をもたらした。1920年代には、修復の際ニスを分厚く塗り、「表面を鏡のように仕上げる」のが主流だったという。
復元作業の途中でとられた写真。ニスの層が残る左側とニスを除去した右側で色合いが異なるShan Kuang / Allentown Art Museum
ニスのコーティングを除去したところ、画家自身が残した筆づかいの跡が明らかになった。続けて多くの専門家が高度なスキャン技術なども使ってこれを分析し、レンブラント本人のものであることを確認するに至った。
肖像画のモデルとなった若い女性は、レンブラントの他の作品にも数多く登場する。この肖像画は復元を終えた後、今年6月に再びアレンタウン美術館に展示される予定だ。