英国の農場でこのたび、古代ローマ時代の希少なモザイク画が発掘されるという「驚くべき」発見があった。
英政府の歴史環境保全機関ヒストリック・イングランドは、イースト・ミッドランズに位置するラトランド州で発掘された１６００年前のモザイク画について、この種の発見は英国では初めてとしている。
同機関による２５日の発表によると、古代ローマ時代のモザイク画にはトロイ戦争でヘクターと戦いを繰り広げるギリシャ神話の英雄アキレスが描かれており、これ以外には欧州で「一握り」の作例が発見されているのみだという。
現場の土地所有者の息子に当たるジム・アーバインさんが「普通じゃない陶磁器」を小麦畑で見つけたのは昨年、イングランドが新型コロナの感染拡大に伴うロックダウン（都市封鎖）を行っていた時期だった。アーバインさんは発見について地元当局に報告した。
レスター大学考古学局の考古学者らは、ヒストリック・イングランドおよびラトランド州当局とともに発掘に当たり、横１１メートル、縦７メートルのモザイク画を発見。
モザイク画を発掘する考古学者ら/Historic England Archive
この作品は、大規模な邸宅のダイニングもしくは娯楽用のエリアだったと考えられる場所の床面を構成していた。建築物は古代ローマ時代末期に当たる３～４世紀に使用されていた。
現在は保護指定されたこの複合建築物についてヒストリック・イングランドは、古典文学の知識を持つ富裕な人物が所有していた可能性が高いと指摘。
同機関のダンカン・ウィルソン代表は報道向け資料の中で、「周囲の邸宅と同様、こうした大きさの希少なモザイク画の発見は驚くべきことだ」と記し、「こうした発見は、我々が共有してきた歴史をつなぎ合わせていく助けとなるという点で非常に重要だ。この遺跡を保護することにより、我々はここから学び続け、ここで暮らしていた人々について、将来の発掘が我々にもたらしてくれるかもしれない知見に期待することが出来る」と述べた。
地球物理学の調査中に発見されたこの邸宅は、この時代の建物に囲まれており、納屋の他、浴場として使われた可能性のある建築物や境界を示す溝などを備えていた。
モザイク画は、大規模な邸宅のダイニングもしくは娯楽用エリアの床面を構成していたと考えられる/Historic England Archive
遺構からは、古代ローマ時代の最末期もしくは中世初頭の時代にさかのぼる複数の遺体も見つかっており、モザイク画よりも後代に現場で埋められたものだという。
同機関は、建物が使われなくなっていた際に遺体が埋葬された可能性が高いとしている。またモザイク画の焼損は、建物が再び使用されたことを示唆するという。
英国には古代ローマ時代の豊富な歴史的遺産が残っている。
先月にはイングランド地方南東部のバッキンガムシャー州ストークマンデビルで、考古学者らが古代ローマ時代の希少かつ「並外れた」男性、女性、子どもの像一式を発見した。また１０００年超前のものと推定されるガラスで作られた六角形の水差しも見つかっている。
別件では今年４月、イングランド北部スカーバラでの新規住宅開発の建設作業中、「ステータスの高い」古代ローマ時代の複合建築物の遺構が発見された。
