覆面アーティストのバンクシーは、2020年にあったブラック・ライブズ・マター(BLM)運動の抗議デモで奴隷商人エドワード・コルストンの彫像を引き倒したことで罪に問われている人々を支援するためにTシャツを販売すると明らかにした。
人種差別に抗議する人々は20年6月7日、英イングランド南西部ブリストルで、黒人男性のジョージ・フロイド氏が米国で殺害されたことを受けて起きたBLM運動との団結を示すデモのなかでコルストンの像を引き倒していた。
デモ参加者は像にロープを結び付けて台座から引きずり落とした。デモ参加者はさらに像をブリストル港に運び、市内を流れるエイボン川に投げ捨てていた。
警察は像を引き倒したことに関連して4人を訴追しており、週内にも裁判が始まる見通し。バンクシーは記念Tシャツについて、「重要な出来事を記念する」ものだとし、11日からブリストルの販売店で25ポンド(約3700円)で販売すると述べた。
バンクシーはインスタグラムへの投稿で、「すべての売り上げを被告に送る。そうすれば彼らは1杯飲みにいけるだろう」と述べた。バンクシーの素性についてわかっていることは比較的少ないものの、ブリストルの出身だとみられている。
バンクシーはまた、Tシャツの画像を共有した。Tシャツはステンシルで「ブリストル」の文字が印刷され、その下にはかつては像が立っていた空っぽの台座が描かれている。台座からはロープがたれ下がり、抗議デモのプラカードがその横に転がっている。
地元のユジーマ・ラジオによれば、Tシャツは市内の5カ所の独立店舗で購入することができる。1人につき購入できるのは1着まで。PAメディアの報道によれば、数千人の人々が11日、限定アイテムを購入するために列を作った。
コルストンは奴隷商人であり、アフリカから数万人の人々を奴隷として移送することを手伝った。奴隷は大西洋を渡り、主にカリブ海の砂糖園やバージニア植民地での作業のため労働力として売られた。
コルストンの像は1895年に設置された。像は地元であるブリストルがコルストンをたたえていた事例のひとつに過ぎない。市内の道路や学校、建物もコルストンにちなんだ名前がつけられていたものの、その多くは名称が変わっている。
バンクシーは像が引き倒された際、像の将来のアイデアとして、「像を元の台座に設置し、首の周りにケーブルを結び付け、像を倒そうとするデモ参加者の等身大のブロンズ像を発注すること」を提案していた。
像は現在、ブリストルにあるMシェッド博物館で、引き倒された場所にあった抗議のプラカードと一緒に一時的に展示されている。像は今年6月に展示され、少なくとも来年1月までは展示される見通し。像の将来について協議が行われている。
昨年はフロイド氏の殺害後、世界中でBLM運動が起きた。インタビューで自身が白人であることを認めているバンクシーは人種差別反対をうたう声明をネット上に投稿している。
「有色人種の人々は制度によって見捨てられている。白人の制度だ。まるで、壊れた水道管が集合住宅の下の階に住んでいる人々の区画を水浸しにしているように。欠陥のある制度が彼らの人生を悲惨なものにしている。しかし、それを直すのは彼らの仕事ではない。(中略)これは白人の問題だ」(バンクシー)