傷ついたパレスチナ人の少年の肖像、年間の報道写真大賞に選出

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ガザへの空爆で傷を負った9歳少年の写真が年間の報道写真大賞に選ばれた/Samar Abu Elouf/The New York Times/World Press Photo

ガザへの空爆で傷を負った9歳少年の写真が年間の報道写真大賞に選ばれた/Samar Abu Elouf/The New York Times/World Press Photo

(CNN) イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区ガザ市への空爆で両腕を失った、パレスチナ人の少年の衝撃的な写真が、年間の報道写真大賞に選ばれた。

自身もガザ出身の写真家、サマル・アブエルーフ氏が9歳のマフムード・アジョール君に出会ったのは、アジョール君が爆発で両腕を切断してから3カ月後のことだった。アジョール君は家族と共に、アブエルーフ氏が活動拠点とするカタールのドーハへ避難していた。現地で治療を受けるのが目的だった。

「マフムード君の母親が説明してくれた中で最も過酷なことの一つは、本人が両腕を切断されたと初めて気付いた時、母親にかけた一言だった。『これからどうやってお母さんを抱きしめたらいいだろう?』」。アブエルーフ氏は、写真の注釈にそう記した。写真は米紙ニューヨーク・タイムズのため撮影され、紙面に公開された。

写真によってまざまざと思い起こすのは、ガザでの戦闘がもたらす長期的な代償に他ならない。戦闘では数万人が死亡。広範囲にわたる破壊と、住む場所を追われる住民とを生み出している。国連人道問題調整事務所(OCHA)の推計によれば、死者のおよそ半数は女性と子どもだという。今も続くイスラエルのガザに対する攻撃は、イスラム組織ハマスが2023年10月7日に遂行した奇襲が引き金だった。

9歳のマフムード・アジョール君は、イスラエル軍による昨年3月のガザ市への空爆で両腕を失った/Samar Abu Elouf/The New York Times/World Press Photo
9歳のマフムード・アジョール君は、イスラエル軍による昨年3月のガザ市への空爆で両腕を失った/Samar Abu Elouf/The New York Times/World Press Photo

「これは静かな写真だが、メッセージは大きく鳴り響いている。一人の少年の物語であると同時に、より広範な戦争についても語っている。その影響は今後数世代にわたって続くだろう」。世界報道写真財団の幹部は、声明でそう述べた。

審査員は今年の応募作の中から三つの中心的な主題を見て取った。それは紛争、移民、そして気候変動だったと審査員の一人、ルーシー・コンティセロ氏は振り返る。同氏は仏紙ルモンドが刊行する「M ル・マガジン・デュ・モンド」の写真を統括している。

「別の見方をすればそれらの写真は強靭(きょうじん)さと家族、共同体の物語だ」(コンティセロ氏)

大賞に輝いた上記の写真は、光と影、美しさと痛みの織りなすコントラストが審査員の心を捉えたと、同氏は言い添えた。

大賞は6万点近い応募作の中から選ばれた。それらは140カ国を超える国々の写真家3778人が手掛けたものだ。

次点には2作品が選ばれた。一つは異世界を思わせる中国人の移民を写した作品。移民らは米国とメキシコの国境を越えた後、炎で暖を取っている。もう一つは一度見たら頭から離れない、若い男性の写真だ。男性は自分の住む村に向かって歩いている。かつては舟で行き来していたアマゾン地方のその場所は、今や砂漠のような川底がむき出しになっている。

南米アマゾン地方に暮らす若い男性。母親が住む村までかつては舟で行き来していたが川が干上がり、今では徒歩での移動を余儀なくされている/Musuk Nolte/Panos Pictures/Bertha Foundation/World Press Photo
南米アマゾン地方に暮らす若い男性。母親が住む村までかつては舟で行き来していたが川が干上がり、今では徒歩での移動を余儀なくされている/Musuk Nolte/Panos Pictures/Bertha Foundation/World Press Photo

地域ごとの優秀作品も選出された。洪水に漬かって立ち往生する米ボーイング製ジェット機の写真は、この世のものとは思えない美しさだ。現場はブラジルのサウガード・フィーリョ国際空港。この他、結婚式に臨むスーダンの花婿の写真も、現実離れした雰囲気を帯びる。

スーダン・オムドゥルマンで結婚式に臨む花婿。スーダンでは祝砲を撃って結婚を知らせるのが習慣になっている/Mosab Abushama/World Press Photo
スーダン・オムドゥルマンで結婚式に臨む花婿。スーダンでは祝砲を撃って結婚を知らせるのが習慣になっている/Mosab Abushama/World Press Photo

入選作品は18日からオランダ・アムステルダムの「新教会」で展示される。その後ロンドン、ジャカルタ、シドニー、メキシコ市など世界各地を巡回する予定。

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