ANALYSIS

【分析】ロシアが突然の「休戦」宣言、その裏に隠された戦略とは

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プーチン氏、イースターにあわせて停戦を発表

(CNN) このタイミングと簡潔さ、唐突にして一方的。ウクライナの支援国が、和平に関してロシア政府がいかに冷笑的かを示す証拠を必要としていたとしたら、イースター(復活祭)にあわせて発表された即時休戦は、まさにそのことを証明したといえるだろう。

今回の休戦の発表のわずか数時間前には、米国のルビオ国務長官とその上司のトランプ大統領が、クレムリン(ロシア大統領府)が和平について真剣だという喫緊の証しが今後数日中に必要だと語っていた。

ロシアの支持者にとって、ロシアのプーチン大統領による休戦の発表はトランプ氏への同意のようにみえた。しかし、今回の突然の宣言は、それが形になる前でさえ、実務上の欠陥にあふれており、プーチン氏が、ウクライナ政府は戦争の停止を望んでいないという誤った考えを裏付けるためだけに利用する可能性が高い。

ウクライナ軍にとって、プーチン氏の命令によって、突然、即座に戦闘を停止することは兵たん上の悪夢となるだろう。

プーチン氏による命令が出されたとき、最前線の陣地の一部は激しい衝突のまっただ中である可能性があり、こうした休戦には数日にわたる準備と用意が必要となる可能性が高い。

誤情報は、休戦の実行をはじめ、違反があった場合の報告や対応、さらには休戦が終了した場合にどうすべきかについて、兵士を混乱させることは必至だ。

この瞬間が、双方が短期間で暴力行為を停止できるめったにない兆しとなる可能性もある。しかし、ロシアもウクライナも違反行為や混乱を利用して、相手を信用できないということを示す可能性のほうがはるかに高い。現地時間19日夜の時点で、ウクライナ当局は、ロシア軍による攻撃が前線で継続していると明らかにしている。

エネルギーインフラに限定された30日間の停戦は完全な混乱のなかで始まった。米ホワイトハウスは「エネルギーとインフラ」が対象だと発表したが、クレムリンは「エネルギーインフラ」への攻撃を直ちに停止したと明らかにした。ウクライナは停戦の開始がロシアが主張したよりも1週間遅れて始まったとしている。停戦合意の履行もまた、不信に満ち、合意違反をめぐる非難の応酬となっている。

ロシア政府は2023年1月にも同様の一方的な宣言を行い、キリスト教正教徒がクリスマスを祝うことができるよう和平の日を呼び掛けていた。当時、ウクライナ政府や西側諸国の指導者は、これを軍事目的の戦略的な停戦として一蹴した。

真の休戦には相手との交渉と、休戦が成立するための準備が必要だ。今回の突然の休戦宣言は、ロシアが戦闘をやめる意思があることを示すなんらかの証しを求めるホワイトハウスからの要求を満たすだけのもののようだ。これは、トランプ氏が時折見せるロシア政府寄りの戦争の捉え方を助長する可能性が高い。ウクライナにとっては、米政府がロシア政府による善意の印とみなすものに違反したと非難されることが避けられず、事態が複雑化する可能性がある。

結局のところ、3年間にわたる戦争での、短期間の、おそらく理論上の、たぶん修辞的な、そして完全に一方的な休戦は、今後数カ月にわたる外交の役割にとって、追い風となるよりもむしろ害となる可能性が高い。

本稿はCNNのニック・ペイトン・ウォルシュ記者による分析記事です。

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