ニューヨーク(CNN) これは非常に恥ずべき状況だ。
トランプ米大統領が「解放の日」と称して関税強化を発表し、世界的な貿易戦争を仕掛けてから2週間が過ぎた。不合理な計算に基づく関税政策は数兆ドルもの時価総額をかき消した。これ以降、日々矛盾した発言と瀬戸際政策が繰り出され、どの主張が実現するのか見通せない状況が続いている(ホワイトハウスが米国の裁判所、高等教育機関、法曹界全体、そして大半のメディアと対立する中で憲法上の危機も迫っている)。
世界中が米国を貿易相手国、旅行先、世界金融市場の担い手として注視し、そして疑念の目を向けているのも不思議はない。
関税が発表される前から、複数の欧州諸国、カナダ、中国は、自国民が米国国境で拘束される可能性があると警告する渡航情報を発表していた。特にカナダ国民は、関税を含むトランプ政権の政策に抗議し、米国への旅行を取りやめる意思を明確にしている。しかし、これはカナダ人に限ったことではない。米ニュースメディア、アクシオスの分析によると、先月末に米国主要空港を訪れた外国人旅行者の数は前年同期比で20%減少した。これは、年間2兆ドル(約285兆円)を超える規模の米国旅行観光業にとって懸念される事態だ。
世界の米国製品に対する需要も打撃を受けている。米国による145%関税に報復措置を取る中国はその筆頭だ。
ブルームバーグ通信は15日、中国政府がボーイング社製の航空機と部品の納入を全面的に停止したと報じた。ボーイング社は直接的・間接的に160万人の雇用を支える典型的な米国の製造業企業。
中国の動きが交渉戦術なのか、ボーイングに対する長期的な不買運動なのかはともかく、5年以上利益を出せていない同社にとってこれは明らかに悪いニュースだ。一方でこれはボーイングの欧州の競合であるエアバスにとっては朗報と言える。
問題は航空機だけではない。米紙ウォールストリート・ジャーナルが報じているように、アップル、ナイキ、テスラ、スターバックスといった米国ブランドが中国国内の競合に市場シェアを奪われているまさにその時に、関税が中国を直撃している。
こうした消費者の拒絶は、企業にとって特に厄介な問題だ。
「現在の状況下で米国ブランドや米国メーカーは多くの危機に見舞われている。直接的には他国による報復措置、間接的には米国製品全般に対する消費者の強い否定的反応だ」と、ユタ州立大学の経済学教授ジョン・ギルバート氏は指摘する。「人々は覚えている。たとえ政府が何らかの合意に達したとしても、人々の記憶がどれほど薄れるかは分からない」
そしてもちろん、米国債市場の混乱もある。これは、トランプ氏の関税政策に対するこれまでで最も明確で、そして率直に言って最も恐ろしい非難だ。
関税に反応して株価が下落したとき、投資家は米国債市場に向かうべきだった。国債は最も退屈だが安全で最も一般的な資産だ。しかし、そうはならなかった。
変動の少ない米国債がリスク資産のような動きを見せ始めたのは、投資家が政府の債務返済能力と経済運営能力への信頼を失いつつある兆候だ。金融界で大規模火災が発生したも同然の状況と言える。
一方、米ドルの価値は下落している。これは従来、市場の安全な避難先とされてきた資産を投資家が敬遠しているもう一つの兆候だ。
米シンクタンク外交問題評議会の上級研究員ハイディ・クレボレディカー氏はインタビューで、「私がこれまで見てきた中で、今回の出来事は金融市場での米国の信頼性を損なう有数の『オウンゴール』だと思う」と述べた。「世界金融危機については、金融市場の観点で米国の信頼性に打撃を与えたと捉えることもできるが、これは違う。新型コロナウイルスは外的ショックだった。これはホワイトハウスが直接引き起こしたものだ」
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本稿はCNNのアリソン・モロー記者による分析記事です。