ロンドン(CNN) 正体不明のストリートアーティスト、バンクシーによる芸術作品が22日、英ロンドンの街路から撤去された。本人が作品の画像をインスタグラムに投稿して間もなく、男性2人が撤去したという。
バンクシーが現地時間の同日正午前後に投稿した一連の画像には、一時停止を命じる道路標識に描かれたドローン(無人機)3機が写っている。
ところが午後0時半までに、ロンドン南東部ペッカムの交差点に立つこの標識を男性2人がボルトカッターを使って撤去していたことが分かった。複数の目撃者が英PA通信に明らかにした。
「インスタグラムを開いて、4分前に投稿があったのを確認した。それで昼の休憩に入ることにした。現場に行くと、2人くらいがそこにいた。自分たちは皆、作品にある種の感銘を受けて、写真を撮った」と、26歳のアレックスさんはPA通信に語っている。
ここで標識によじ登り、手をかける者が現れた。「我々が驚いて眺めている中、彼は標識を殴りつけていた」と、アレックスさん。手では標識を撤去できないと分かった男が、数分その場から立ち去った後、ボルトカッターを持って戻ってきたと振り返った。
「皆で男に『何をやっているんだ?』と問いただしたが、実際のところどうしたらいいか誰にも分からなかった。ただ事態を見守っているしかなかった。全員が少し戸惑っていた」(アレックスさん)
標識はそのまま男性が持ち去ったとみられる/Aaron Chown/AP
「彼は標識を外し、道路を渡って逃げて行った。何も言わず、作品そのものにもあまり注意を払っていないようだった」と、アレックスさんは付け加えた。
匿名でPA通信の取材に答えた別の目撃者は、標識が撤去されたことに対する不満を吐露。
「おかしな話だ。こうした芸術作品は素晴らしい。しばらくの間そこにあれば最高だっただろうに」と話した。
PA通信が報じたところによると、バンクシー本人は撤去に関与していないと思われる。
謎多き芸術家のバンクシーは、自身の作品をソーシャルメディア上で確認するものの、それ以上は一切のコメントを残さないことで知られる。
今回の最新作については、イスラエルとイスラム組織ハマスによる紛争の停戦を呼びかけたものと解釈する人もいる。バンクシーはパレスチナ人の掲げる大義を支持していることでも知られるからだ。
バンクシーがベツレヘムに所有するホテルは、イスラエルが設置した「分離壁」から数歩の距離に位置する。この壁はイスラエル占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区を貫く形で立っている。
バンクシーは2017年に当該の「ウォールド・オフ・ホテル」を開業した。イスラエルとパレスチナの紛争に注意を向ける狙いで建設されたこのホテルには、「世界最悪の眺め」を誇るとの売り文句が付いている。
バンクシー作品の市場価値は近年うなぎ上りだが、本人は依然公共の場での制作を続ける。そのため作品の保護は不可能に近く、窃盗や汚損も誘発することになる。
バンクシーが描いた最も有名な壁画の一つ「スパイ・ブース」は、録音機材を持ったスパイ風の男3人が公衆電話を取り囲む姿を描いたものだが、16年に破壊された。
また今年2月、廃棄された本物の冷蔵庫を部分的に組み合わせた壁画がイングランド南東端の町マーゲイトに現れたが、バンクシーが自らの作品だと確認したところものの数時間でこの冷蔵庫は持ち去られてしまった。
18年には、バンクシー本人が自身の作品の1つを破壊したことが話題を集めた。女の子と赤い風船が描かれたこの絵画作品は、オークションを通じ140万ドル(現在のレートで約2億円)で落札された直後、シュレッダーにかけられた。