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行方不明のヘンリー8世の肖像画、美術史家がX上で目ざとく発見

行方不明となっていたイングランド王ヘンリー8世の肖像画がSNSを通じて見つかった

行方不明となっていたイングランド王ヘンリー8世の肖像画がSNSを通じて見つかった/Adam Busiakiewicz via CNN Newsource

ロンドン(CNN) 美術史家は、ソーシャルメディア上で偶然発見した絵が行方不明のヘンリー8世の肖像画だと断定した。

英国の美術研究者アダム・ブシアキエヴィッチ氏がX(旧ツイッター)上で何気なく画面をスクロールしていると、フォローしているある人物の投稿が目に留まった。

それはイングランド中部ウォリックシャー州の統監(ロード・リューテナント)、ティム・コックス氏が共有した写真だった。統監は、各州で英国王室を代表して公式行事などを担当する名誉職だ。

その写真には、ウォリックシャー州議会があるウォリックのシャイアホールの大広間に集まった人々が写っていた。

特徴的な額縁も肖像画を特定する決め手の一つとなった/Adam Busiakiewicz via CNN Newsource
特徴的な額縁も肖像画を特定する決め手の一つとなった/Adam Busiakiewicz via CNN Newsource

しかし、ブシアキエヴィッチ氏が興味を持ったのは、カメラに向かってほほえんでいる人々ではなかった。彼が注目したのは、その背後の壁に掛けられていた1枚の絵だ。ブシアキエヴィッチ氏は、その絵が行方不明となっているチューダー朝の王ヘンリー8世の肖像画ではないかと考えた。

ブシアキエヴィッチ氏は先月、自身のブログに投稿した記事の中で、画面を素早くスクロールしていたら、壁に掛けられている「額縁の上部が独特のアーチ型をした」(ヘンリー8世の)絵を発見したと述べていた。

ブシアキエヴィッチ氏は、その絵を見た瞬間、1590年代に地元の政治家でタペストリー職人でもあったラルフ・シェルドンの依頼で制作された22枚の肖像画を思い出した。

地域史家のアーロン・マニング氏(左)と美術史家のアダム・ブシャキエビッツ氏/Adam Busiakiewicz via CNN Newsource
地域史家のアーロン・マニング氏(左)と美術史家のアダム・ブシャキエビッツ氏/Adam Busiakiewicz via CNN Newsource

ブシアキエヴィッチ氏によると、シェルドンは、自宅であるウォリックシャーのウェストン・ハウスに飾る目的でこれらの絵の制作を依頼し、その大半は国王や王妃、さらに「当時の重要な国際的著名人」の肖像画だったという。また、それらの絵の上部がアーチ型をしているのは、かつてウェストンのロングギャラリーのフリーズに組み込まれていたためだとブシアキエヴィッチ氏は説明した。

ブシアキエヴィッチ氏は、CNNに送付したプレスリリースの中で、この額縁の上部のアーチ型は「シェルドンが依頼した絵の特別な特徴」であり、この(ヘンリー8世の)絵の額縁は、現存する他の絵の額縁と全く同じだと述べた。

また、その絵に描かれているヘンリー8世は、剣を持ち、羽飾りのついた帽子をかぶっており、1839年に古物研究家ヘンリー・ショーが制作したロングホールの版画に描かれている彼の姿と同じだ。

ブシアキエヴィッチ氏によると、その22枚の肖像画は、後にオークションで散り散りになり、「その大半は今日まで行方不明のまま」だという。

ブシアキエヴィッチ氏は、そのヘンリー8世の絵に関する持論を公表した後、地元の歴史家アーロン・マニング氏とともにウォリックのシャイアホールを訪れ、その絵を間近で確認した。ブシアキエヴィッチ氏は7月22日のブログ投稿の中で、「その肖像画は大きく、シェルドンが制作を依頼した他の肖像画と(特徴が)完全に一致している」と述べた。

またブシアキエヴィッチ氏は、CNNとの電話インタビューで、ソーシャルメディアのおかげで絵を発見できたのは今回が初めてではないと明かした。

2018年には、ある友人が結婚式で撮影し、インスタグラムに投稿した写真を偶然発見した。その写真には1枚の肖像画が写っており、ブシアキエヴィッチ氏は、それが17世紀の女性画家ジョアン・カーライルの作品だと特定した。

ブシアキエヴィッチ氏はCNNに「ソーシャルメディアは何でもありだ」と述べ、さらに次のように続けた。

「(ソーシャルメディアで)猫の動画を見たり、世界で今何が起きているかを確認する人もいれば、私のように人々が自宅の壁に掛けているものに注目する人もいる」

ウォリックシャー州議会の報道官は、CNN宛てのメールの中で、ブシアキエヴィッチ、マニング両氏から(ヘンリー8世の)絵について問い合わせがあったので、2人が絵を見に来られるように手配したと述べた。

同報道官はメールの中で「アダムさんとアーロンさんは、シャイアホールでその絵を見て、ラルフ・シェルドンが制作を依頼した作品の一つだと確信していると明言した」とし、

さらに「この発見後、その絵はより詳しい研究を行うためにミュージアム・コレクション・センターに移送された」と付け加えた。

ブシアキエヴィッチ氏によると、この絵を描いた画家の正体は不明だが、この22枚の肖像画の制作者は「シェルドン・マスター」と呼ばれることがあるという。

現在、同氏はその絵のプロブナンス(出所)を明らかにしようと取り組んでいる。この絵は、ウォリックシャー州議会が1951年に取得したが、記録には複数の空白がある。

ブシアキエヴィッチ氏は「出所の確認が非常に厄介で、特に絵が個人的に売却された場合は出所の特定が非常に困難な場合がある。しかし、これがラルフ・シェルドンの依頼で制作されたヘンリー8世の肖像画であることは間違いない」と述べ、さらに次のように続けた。

「絵や絵の写真の鑑賞こそ私の人生であり、この上なく楽しい。特に、歴史的な誤りを何らかの形で正すことができた時の喜びは格別だ。(世の中には)見落とされていたり、もっと評価されるべき絵が数多く存在する」

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