(CNN) 世界的に著名なロシアのバレエダンサー、ウラジーミル・シクリャローフ氏が16日、建物の5階から転落して死亡した。
ロシア・サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場が同氏の死亡を確認した。シクリャローフ氏は同劇場の最高位のダンサーだった。
「マリインスキー劇場全体のチームにとって極めて大きな損失」と、同劇場は述べた。
ロシア当局はシクリャローフ氏の死亡に関して捜査を開始したが、「初期段階での原因」は事故と判断している。ロシア国営のRIAノーボスチ通信が報じた。
2015年、マリインスキー・バレエ団の「白鳥の湖」で踊りを披露するシクリャローフ氏(右)/Jack Vartoogian/Getty Images
「彼の死は自然死だった。犯罪ではない」と、緊急サービスの情報筋はRIAノーボスチに明らかにした。
国内メディアによると、シクリャローフ氏が死亡したのは複雑な脊髄(せきずい)手術を受ける予定の2日前だった。ここまで「強めの痛み止め」を服用することもあったという。
同じくマリインスキー劇場のプリンシパル(トップ・ダンサー)であるディアナ・ビシニョーワ氏は、シクリャローフ氏の死をバレエ界にとっての「悲劇」と形容した。
レニングラード(現サンクトペテルブルク)で生まれたシクリャローフ氏は、名門の国立ワガノワ・バレエ・アカデミーで学び、2003年に卒業。同年にマリインスキー劇場に加入し、11年以降プリンシパルの地位にあった。
20年以上に及ぶキャリアの中で「白鳥の湖」、「眠れる森の美女」、「ロミオとジュリエット」、「ドン・キホーテ」といった作品の主役を演じた。また英ロンドンのロイヤル・バレエ団、米ニューヨークのアメリカン・バレエ・シアターなど、ロシア国外のバレエ団にも客演。受賞歴も数多い。
22年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始すると、平和への支持を口にしていたと伝えられる。
ロシア系ウクライナ人の元バレエダンサー、アレクセイ・ラトマンスキー氏はフェイスブックへの投稿で、シクリャローフ氏の言葉として「私はウクライナでの戦争に反対する! 私は人々の側に立つ。平和の空が頭上に広がるのを支持する」と書き込んだ。
モスクワを拠点とするボリショイ・バレエの芸術監督を務めたラトマンスキー氏は当時、バレエ界の関係者から戦争に反対するメッセージを集めていた。
シクリャローフ氏はマリインスキー劇場で同僚だったダンサー、マリア・シリンキナ氏と結婚。夫婦の間には男女2人の子どもがいる。
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原文タイトル:Russian ballet star Vladimir Shklyarov dies after falling from building(抄訳)