Arts

AI作品に特化したアートオークション、中止求める書簡に約4000人が署名

クリスティーズ主催のオークションに出品予定の「Embedding Study 1」と「Embedding Study 2」。推定落札価格は7~9万ドル

クリスティーズ主催のオークションに出品予定の「Embedding Study 1」と「Embedding Study 2」。推定落札価格は7~9万ドル/Courtesy Christie's Images LTD 2025

(CNN) 4000人近い人々が公開書簡に署名し、オークション会社クリスティーズが米ニューヨークで開催予定の競売の中止を要求している。当該の競売は人工知能(AI)で制作した芸術作品のみを扱うもので、主要なオークション会社がこの種の競売を手掛けるのは初めて。書簡に署名した人々は、出品予定の一部の生成デジタル作品に使用されたプログラムついて、著作権で守られた作品を基に訓練されている懸念があると指摘し、人間のアーティストの搾取につながりかねないと訴えている。

ネット上での公開書簡は、8日に拡散し始めた。この前日、クリスティーズは拡張知能を取り上げた当該のオークションの開催を発表していた。同社はこのオークションで60万ドル(約9200万円)を超える利益が出ると見込む。オークションのロット数は20以上で、作品の年代は50年にまたがる。このうちざっと4分の1は、NFT(非代替性トークン)のようなデジタル世代の作品だと、クリスティーズは説明する。オークションの開催期間は今月20日から来月5日まで。

クリスティーズに対してオークションの中止を求める書簡には、3936人が署名した。署名者らが主に問題視しているのは出品作品の一部の制作に使用されるAIモデルについてで、署名者らによればそうしたモデルは著作権で保護された作品に基づく訓練を制作者の許可なく施されているという。

「これらのモデルとその背後にいる企業は人間のアーティストを搾取している。彼らの作品を許可なく、報酬も支払わずに使用し、商業的なAI製品を作り上げて彼らと競合させている」。書簡はそう主張する。「こうしたモデルを支持し、使用することは、AI企業による生身のアーティストの作品に対する大量窃盗に見返りをもたらし、一段の動機付けを与える行為に他ならない」

同作品「Study 33」の推定落札価格は2万~3万ドル/Courtesy Christie's Images LTD 2025
同作品「Study 33」の推定落札価格は2万~3万ドル/Courtesy Christie's Images LTD 2025

アーティストの著作物を使って生成AIモデルを訓練し、画像生成プログラムを動かす事例を巡っては、既に当該のソフトウェアを作ったハイテク企業を相手取った訴訟が起こされている。アーティスト側は許可や金銭的な補償がないまま自分たちの作品が使用されたと主張。企業側はフェアユースを引き合いに出して自社を擁護した。フェアユースは著作権侵害の主張に対する抗弁事由の一つで、一部の著作物に関して、著作権者の許諾を得なくても利用できることを認める内容。

今回の書簡の宛名は、クリスティーズのデジタルアートの専門家、ニコール・セールズ・ジャイルズ氏とセバスチャン・サンチェス氏となっている。同社の広報担当者は声明の中で、アートの専門紙アート・ニュースペーパーの取材に答え、「今回の競売で取り上げられているアーティストらは既に強固な存在感を示し、数多くの分野にまたがる芸術を実践している。一部は主導的な美術館に作品が収蔵されてもいる。この競売における当該の作品は、AIを使って彼らが手掛ける一連の作品の価値を高めることを念頭に置いている」と述べた。

「Emerging Faces」では二つのAIエージェントが協業。片方が顔を描き、もう片方のAIが人間の顔であると認識した時点で作業をやめさせるという流れで制作されたという/Courtesy Christie's Images LTD 2025
「Emerging Faces」では二つのAIエージェントが協業。片方が顔を描き、もう片方のAIが人間の顔であると認識した時点で作業をやめさせるという流れで制作されたという/Courtesy Christie's Images LTD 2025

時々作品にAIを取り入れるアーティストのサープ・カレム・ヤブズ氏は、AIが生成した芸術作品を窃盗とする考えについて、そのような作品に使われるデータセットに対する誤解に基づくものだと指摘する。同氏の作品は今回のクリスティーズのオークションにも出品される。

「大半のAI生成の画像は、文字通り数百万もの画像を組み合わせた結果だ。つまりその画像が自分の作品だと主張できるアーティストなど一人もいない。草原だろうが、英雄的な騎士だろうが、猫だろうが花だろうが、誰かの特定の創作物を基にした画像だと主張することはできない」。同氏は声明でそう述べた。「AI生成画像は多くのやり方で人間の発想を模倣する。より効率的に情報を解析できる」

AI技術が発達し、日常生活に一段と組み込まれていく中、著作権やフェアユースに関する法律はこの流れについて行けずにいる。先月、米著作権局はアーティストらに対し、AIツールを使って制作した作品を著作権で保護できるとする判断を下した。ただ「完全にAIで生成された作品」は、依然として著作権保護の対象外とされた。

原文タイトル: Thousands call on Christie’s to cancel AI art auction in open letter (抄訳)

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]