(CNN) トランプ米大統領の妻、メラニア夫人は、まっすぐ前を見つめたまま、強烈に反射する表面――机、鏡、それとも水面だろうか――に前かがみになり、マニキュアが完璧に塗られた指先でバランスを保っている。力強いポーズで写るこの写真は、第47代ファーストレディーの公式ポートレートだ。
ホワイトハウスが27日に公開したこの写真は、ベルギーの写真家レジーヌ・マオー氏が撮影したもので、すでにネット上で議論を巻き起こしている。これはメラニア氏の2枚目の公式ポートレートだが、1枚目とは非常に対照的だ。2017年、メラニア氏のファーストレディーとしての写真は、主に同氏が「ドルチェ&ガッバーナ」を着たことで物議を醸した。この衣装の選択は、米国製をアピールする機会を逃したとして全米のファッション評論家に衝撃を与えた。今回もメラニア氏は反抗するかのように同ブランドのシングルタキシードジャケットを着用している。しかし今回は、他にも解明すべき巧妙な選択がある。
8年前、私たちは鮮やかな色に彩られたメラニア氏を紹介された。同氏のブロンズ色の肌と鋭い青い目は、キャラメル色のバレイヤージュで完璧に縁取られていた。今回、メラニア氏は厳然としたモノクロの中にいる。前回は物憂げなモナリザ風の表情(見方によってほほえんでいるか、顔をゆがめていると思わせる程度に口元は開かれていた)だったが、今回の写真に解釈の余地はない。口を結び、毅然(きぜん)としている。今回は立場が逆転し、メラニア氏が我々を分析しているように見える。
力強いポーズで写るモノクロの写真は1期目の写真とは真逆だ/Régine Mahaux/The White House
前回のカラー写真では笑顔ともとれる表情でカメラにも近い/Régine Mahaux/The White House
ロサンゼルス・タイムズ紙とワシントン・タイムズ紙のジャーナリスト、スコット・ホレラン氏は今回の写真について「大統領の妻として実務に携わり、目の前の仕事に向き合うメラニア・トランプ氏を表していて気に入っている」とX(旧ツイッター)に書き込んだ。しかし、一部の人にとっては、この近寄りがたいポーズは単なるポーズに過ぎない。SNSでは、この写真をネットフリックスのドラマシリーズ「ハウス・オブ・カード」の架空のファーストレディー、クレア・アンダーウッドや、GQ誌のファッション撮影中のキム・カーダシアン氏と比較している。
しかし、どれほどわかりにくいとしても、このポートレートは、メラニア氏が大統領就任式で伝えたソフトパワーのメッセージの延長線上にある。カメラに映らないよう目を覆い隠していたエリック・ジャビッツ氏デザインのボーターハットは、物理的な境界であり、キスをしようと身を寄せた夫を含め、すべての人を遠ざけていた。今回、マオー氏が撮影した写真では、見る人と被写体を隔てる海(鏡面デスク)によってメラニア氏はカメラから遠く離れている。
トランプ夫妻は、印象的な写真が持つ世論を変える力をじかに目撃してきた。24年7月、ペンシルベニア州での選挙集会中に発生した暗殺未遂を生き延びたトランプ氏の劇的な写真がネット上にあふれた。シークレットサービスに囲まれ、顔から血を流しながら、群衆に向かってこぶしを突き上げたこの力強い写真は、トランプ氏を並外れた英雄として描き出した。批判的な者さえこれには同意せざるを得なかった。
ペンシルベニア州での写真は偶発的であり、すべての写真をコントロールできるわけではないが、トランプ氏は視覚効果をより真剣に受け止めている。そしてメラニア氏は夫のやり方に倣ったようだ。ふたりとも、一枚一枚の写真で世間の認識を再構築しようとしている。
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原文タイトル:Look of the Week: First lady Melania Trump means business in official portrait(抄訳)