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ファッション大手H&M、自社モデルのAIクローン使用を計画 業界内から懸念の声も

H&Mが自社モデルの一部のデジタル版を作る計画を発表した

H&Mが自社モデルの一部のデジタル版を作る計画を発表した/Richard Baker/In Pictures/Getty Images

(CNN) スウェーデンのアパレル大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)が、自社のモデルのデジタルクローンを年内にも作り出す計画を立てていることが分かった。人工知能(AI)の潜在力とそれが労働者に与える影響の両方に取り組む業界にとって、多くの疑問が浮上する状況となっている。

衣料品小売り世界最大手の一つであるH&MはCNNの取材に答え、自社モデルの「デジタルツインズ(双子)」30体を年内に作り出す計画を明らかにした。ただこれらの分身をどのように活用するのかはまだ「模索中」だとした。モデル事務所やモデル本人とは連携しており、当該の構想を「責任あるやり方で」進める意向だとも付け加えた。

同社によればモデルらは自分たちのデジタルツインの権利を保有し、あらゆるブランドと仕事ができるようになる見込み。いかなる広告活動の場合とも同様に、その機会ごとに対価が支払われる仕組みだという。

自分たちの分身への対価をモデルらが受け取るとしたこの約束について、英国におけるパフォーマンスアーツとエンターテインメント業界の労働組合、エクイティーの事務局長を務めるポール・フレミング氏は歓迎する姿勢を示す。それでもCNNの取材に対する声明の中で同氏は、そうした約束について「裏付けが必要」と指摘。AI保護に関する組合との合意を幅広く適用する他、法律によって労働者の権利を守ることも求められるとした。

「人工知能分野の『技術革新』競争が、利益拡大を目的とした底辺への競争になってはならない」「人工知能も人間の芸術的才能と労働無しには成り立たないのだから、今後も人間こそが創造的努力の中心であるべきだ」(フレミング氏)

H&Mの発表に対しては、既にファッション業界内から反発の声が噴出している。この業界では現段階でさえ、多くの労働者のキャリアが不安定な状況にある。

モデルから労働活動家に転じ、米ニューヨークを拠点とする非営利団体モデル・アライアンスを立ち上げたサラ・ジフ氏は、「有意義な保護措置が講じられないまま、デジタルの複製を使用することに深刻な懸念がある」と打ち明けた。

「元来労働者の人権に対する配慮が遅れている業界で、H&Mの打ち出す新構想には同意と補償の面で重大な疑問が浮上している。構想はファッション業界で働く多くの人々を入れ替える可能性もある。メーキャップアーティストやヘアスタイリスト、その他業界内のクリエーティブなアーティストらがそこに含まれる」。モデル・アライアンスが出した声明の中で、ジフ氏はそう述べた。

こうした技術の活用を模索しているファッションブランドはH&Mだけではない。米ジーンズメーカーのリーバイスは2023年3月、AIで生成したモデルを「人間のモデルの補助」として使用する意向を発表。激しい批判を浴びた後、「生身の人間の写真撮影を減らすことはない」と明らかにした。

昨年7月にはスペインのファッションブランド、マンゴが完全にAIで生成した広告キャンペーンを打ち出し、若者向けの新たなコレクションを売り込んでいる。

一方、AIによって作り出されたインフルエンサーやモデルの存在はますます一般的になっており、昨年には世界初のAI版ビューティーコンテストも開催された。

原文タイトル: Fashion giant H&M plans to use AI clones of its human models. Not everyone is happy

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