スペインでこのほど、考古学者らがアナグマのおかげで、洞窟に長年隠されていた古代ローマ時代の硬貨200枚あまりを発見する出来事があった。
昨年12月に発表された論文によると、アナグマは同国北西部アストゥリアス地方のラケスタ洞窟にある岩の裂け目に入り込み、硬貨を掘り起こした。これを地元の男性ロベルト・ガルシアさんが後に発見したという。
ガルシアさんは考古学者らに連絡。その中の1人である発掘責任者のアルフォンソ・ファンフル氏は、アナグマは餌を探していたか、巣穴を掘っていたのだろうとの見方を示す。
ファンフル氏は10日、CNNの取材に「現場に到着したところアナグマの巣につながる穴が見つかり、その周囲の地面に大量の硬貨があった」と振り返った。アナグマによって90枚以上の硬貨が掘り出されていたという。
スペイン北西部の洞窟で硬貨が見つかった/Alfonso Fanjul Peraza
研究チームはその後発掘作業を行い、紀元200~400年の時期の硬貨計209枚を回収した。
200~400年というと、スエビ族などの蛮族がイベリア半島にたどり着いた後期ローマ時代に当たる。
ファンフル氏はこれらの通貨について、洞窟に避難した人々が隠したものとの見方を示し、「ローマ崩壊とスペイン北部への蛮族到来に伴う社会・政治情勢の不安定さを反映している」と指摘した。
硬貨は蛮族から避難した人たちが隠したとみられている/Alfonso Fanjul Peraza
硬貨はいま洗浄作業が進められており、いずれアストゥリアスの考古学博物館で展示される予定。同氏は年内にさらなる発掘作業を行う計画だ。
「最初の遺物は発掘したが、我々はもっと多くのものが眠っていると考えている」とファンフル氏。ただ、現時点でも既に、スペイン国内の洞窟から回収されたローマ時代の硬貨としては最多の規模だという。
発見の瞬間については「若いころに夢見る特別な瞬間」「考古学者としてまさか出会えるとは思わない唯一無二の瞬間」だったと振り返っている。
ファンフル氏はさらなる発掘を通じ、ローマ帝国崩壊とスペイン北部における中世王国勃興への理解を深めたい考え。「移行期を生きた人々への知見を深めるのに理想的な場所だと思う」と語っている。