中国版インスタグラム「小紅書」、旅行業界にもたらす変化とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ケネディタウン地区のカフェで写真を撮る中国人観光客/Noemi Cassanelli/CNN

ケネディタウン地区のカフェで写真を撮る中国人観光客/Noemi Cassanelli/CNN

香港(CNN) 香港西部の住宅地の中にあるケネディタウン・プレイグラウンドのバスケットボールコートは、特に目立った特徴もなく、大半の地元住民は素通りする。

しかし、中国本土からこの街を訪れる多くの旅行者にとって、このバスケットボールコートは必見の観光スポットだ。

彼らはバスケットボールがしたいわけではない。坂の脇にあるこのコートからは、香港のスカイラインが一望できるのだ。

中国人旅行者たちは、このような人目に付かない場所をたまたま発見しているわけではない。彼らの多くは「小紅書」のフォロワーたちだ。小紅書は、中国版インスタグラムともいえるソーシャルプラットフォームで、今や中国人の旅行のバイブルとなっている。

香港のケネディタウン地区は小紅書のユーザーの間で人気のスポットだ/Noemi Cassanelli/CNN
香港のケネディタウン地区は小紅書のユーザーの間で人気のスポットだ/Noemi Cassanelli/CNN
香港の街並みの眺望から、ケネディタウンは人気撮影スポットになっている/Noemi Cassanelli/CNN
香港の街並みの眺望から、ケネディタウンは人気撮影スポットになっている/Noemi Cassanelli/CNN

小紅書を読む

最近、北京から冒頭の香港のバスケットボールコートを訪れた旅行者のジャオ・ルーさんは、「小紅書はあらゆる情報を網羅しており、情報量で小紅書にかなうプラットフォームは存在しない」と語る。

14億人の人口を抱える中国は、旅行市場において無視できない大きな存在だ。しかし、多くの既存の旅行アプリやおすすめツールは、中国語の包括的な情報を提供していない。

そのため、小紅書は旅行アプリ市場を独占しており、アジアだけでなく、世界中で、人々の旅行スタイルを変えている。西洋人旅行者たちがあまり訪れないような目立たない場所が、このアプリのユーザーたちの口コミで、一躍、中国人旅行者たちの人気スポットになっている。

たとえば、デンマークの首都コペンハーゲンでは、中国人旅行者は、人魚姫の像やチボリ公園に直行せず、ノアブロの閑静な住宅街にあるスーパーキーレン・アーバンパーク内の公共スペース「ブラック・スクエア」に殺到する。この広場の地面に、磁界のような明るい白色の線が描かれているためだ。

また日本では、鎌倉のある踏切に集まる。この踏切が、多くの中国人ファンが崇拝するバスケットボールをテーマにした日本のアニメ「スラムダンク」に登場するからだ。

鎌倉を通る江ノ電/Zhizhao Wu/Getty Images/File
鎌倉を通る江ノ電/Zhizhao Wu/Getty Images/File
コペンハーゲンにあるスーパーキーレン・アーバンパークには中国人観光客が殺到している/Giovanni Mereghetti/UCG/Universal Images Group/Getty Images/File
コペンハーゲンにあるスーパーキーレン・アーバンパークには中国人観光客が殺到している/Giovanni Mereghetti/UCG/Universal Images Group/Getty Images/File

このように、ほぼ中国人旅行者のみが殺到する意外な観光スポットが増えているのは、小紅書によるところが大きい。

小紅書のユーザーの大半は中国国民で、投稿の大半は中国語で書かれているため、小紅書での出来事は、通常、小紅書内にとどまる。そのため、中国以外で旅行者が小紅書の情報に触れることはほとんどない。

ケネディタウン地区で写真を撮る少女たち/Noemi Cassanelli/CNN
ケネディタウン地区で写真を撮る少女たち/Noemi Cassanelli/CNN

アプリの裏側

「小紅書」という名前は、中国建国の父、毛沢東の言葉を引用・編集した赤い表紙の「毛主席語録」にちなんで付けられた。

上海に本社を置く小紅書は、2013年に友人同士だったチャールウィン・マオ氏とミランダ・ク氏が、中国のネット市民が自分の生活に関するさまざまな情報を共有するための手段を提供する目的で設立した。

中国のソーシャルメディア調査会社、千瓜数据によると、今や小紅書は、中国で最も人気のあるプラットフォームの一つで、ユーザー数は3億人に達し、その半数は都市部に住む35歳未満の人々だという。

またコンテンツのジャンルも、おすすめの観光スポットだけでなく、日常の出来事や、メイクのコツ、ファッションガイドなど、多岐にわたる。

欧州の一部の企業は、この小紅書の人気にあやかっているようだ。ロンドンで2軒のタパス専門レストランを経営しているロボスは、今年8月、「ロボスが正式に小紅書に登場!」と中国語で初投稿を行った。

レストランのディレクターの一人、ジョエル・プラセレス氏は、このアプリを活用することで、中国人コミュニティーとの直接的なつながりを築き、リーチを拡大し、レストランの可視性を高めることができる、とそのメリットを語る。

実際、小紅書には、ロボスのレストランに関するユーザーのレビューが数多く寄せられており、小紅書で「いいね」の数が最も多い料理は、レストランでも注文数が増える傾向にあるという。そのため、人気料理は注文システムにさらに追加し、スタッフが中国人旅行者の注文を受けやすくする措置を取っている、とプラセレス氏は付け加えた。

香港の有名スポットで写真を撮る女性/Noemi Cassanelli/CNN
香港の有名スポットで写真を撮る女性/Noemi Cassanelli/CNN
ケネディタウン地区で写真を撮る中国人女性/Noemi Cassanelli/CNN
ケネディタウン地区で写真を撮る中国人女性/Noemi Cassanelli/CNN
メールマガジン登録
見過ごしていた世界の動き一目でわかる

世界20億を超える人々にニュースを提供する米CNN。「CNN.co.jpメールマガジン」は、世界各地のCNN記者から届く記事を、日本語で毎日皆様にお届けします*。世界の最新情勢やトレンドを把握しておきたい人に有益なツールです。

*平日のみ、年末年始など一部期間除く。

「CNNが見たアジア」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]