この小都市が「眼鏡の都」である理由 福井・鯖江
(CNN) 日本は熟練した職人の国として知られており、職人たちは伝統へのこだわりを保ちながら、新しい素材や製造工程の開発にあわせて生産技術を近代化させてきた。
日本国内には、極上の着物から完璧なデザインの刃物まで、特定の工芸品に焦点を当てることで有名になった場所がいくつもある。電車で東京から約3時間半の場所にある福井県の小都市、鯖江もそうした場所の一つだ。
鯖江は日本の「眼鏡のまち」として広く知られているが、それには理由がある。市によれば、国内で製造される眼鏡フレームの90%以上が鯖江で作られている。市内には眼鏡の形をした看板やオブジェが目につくが、眼鏡をテーマにしたミュージアムがあるほか、眼鏡がテーマのイベントも開催される。
眼鏡づくりの芸術
鯖江は100年以上にわたって高品質の眼鏡を生産してきた。
全ては1905年に始まった。地元の農民らに新たな機会を創出する試みとして、熟練した眼鏡職人を招いて技術を教わった。
この取り組みが功を奏し、現在、鯖江では100以上の企業が協力して眼鏡を生産している。
そうした工房では最先端の機械を駆使して金属や「アセテート」の新しいフレームを製造しているが、大部分の段階では依然として、経験を積んだ職人が持つ熟練の手と訓練された目を必要としている。
そうした職人のひとりが「ボストンクラブ」のデザイナー、山根剛さんだ。山根さんはCNNの取材に対し、一つの眼鏡で200以上の工程が必要になることもあると語った。
山根さんによれば、最初にデザインをし、スケッチして、それをコンピューターに取り込む。そこからデザインを初めて、完璧な製品が完成するまで1年以上かかるという。
鯖江にある「めがねミュージア厶」/Futa Nagao/CNN
山根さんは、カーボンなどの新しい素材を使うのは好きだが、新しいフレームの製造にどれだけの時間がかかるかを考えると流行は追わないと語る。その代わり、未来に目を向けるという。
山根さんは、誰に着用してほしいのかを考えることから始めるとし、家屋や庭、食器など日本的なものからインスピレーションを受けることが多いと語った。
鯖江で作られたフレームは日本全土に存在しているが、同市を訪れてその工程を間近で見ることができるのは格別だ。
フレームの製造工程にかかわる職人の中には、機械による切削や研磨、ノーズパッドの取り付けなどたった一つの技術に職歴の全てを捧げている人もいる。
鯖江にある「めがねミュージア厶」には完璧な眼鏡が完成するまでのさまざまな工程を紹介する展示があるほか、眼鏡の技術に焦点を当てたさまざまな催し物も開催される。
ミュージアムでは自分用のフレームを作りたい人向けのワークショップにも参加でき、完璧なお土産となりそうだ(事前予約が必要)。時間がない人は、福井県の企業約50社が製造した数千点のフレームを取りそろえたショップを訪れることもできる。
眼鏡を越えて
今年3月、北陸新幹線が敦賀駅まで延伸した/The Asahi Shimbun/Getty Images
今年に入り北陸新幹線が敦賀駅まで延伸したおかげで、多くの場所が東京とつながり、旅行客の少ないこの地方を訪れることがこれまで以上に簡単になった。
福井県には鯖江市のほかにも、保存状態の良い昔の建築物や史跡、寺院だけでなく、レッサーパンダで有名な西山動物園など新しい観光名所もたくさんある。
最近リニューアルを終えた福井県立恐竜博物館はアジア最大級の恐竜のコレクションを誇る。同博物館は50体の恐竜の全身骨格を展示しており、展示の中には、めずらしいブラキロフォサウルスのミイラ化石も含まれる。
サクラを求める人たちには足羽川だ。福井市内を流れる足羽川の川沿いには毎年春に開花する桜並木が2キロにわたって続いている。
福井市は、日本で天守が現存している12の城のひとつである丸岡城や、曹洞宗の大本山のひとつ永平寺を訪問する際の拠点ともなりそうだ。
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原文タイトル:Why this small city is the ‘eyeglasses capital’ of Japan(抄訳)