トランプ氏、安全保障の要職に「素人」起用 劇的な失態招く

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トランプ大統領(左)とヘグゼス国防長官/Carlos Barria/Reuters

トランプ大統領(左)とヘグゼス国防長官/Carlos Barria/Reuters

(CNN) 筆者は24日の時点ですでに、ニュースレター「ワット・マターズ」向けの記事でこう伝えていた。トランプ米大統領が政府業務の刷新と縮小のために実業家や政治的盟友を選んだことによって素人のような雰囲気が醸成されたと。

しかし、筆者が集めた事例はすべて、アトランティック誌のゴールドバーグ編集長が24日に報じた暴露に比べれば見劣りする。その記事の見出しは「トランプ政権、戦争計画を誤って私にテキスト送信」だった。

より具体的に言えば、ジャーナリストに戦争計画をテキスト送信した当局者はヘグゼス国防長官のようだ。同氏は公務経験の不足について深刻な懸念があったにもかかわらず、上院で承認された。ヘグゼス氏の直近の前職はFOXニュースの司会者だ。

この記事には、トランプ政権の国家安全保障を担当する大物全員の名前が挙がっている。

どういうわけかゴールドバーグ氏はウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)によって非公開の暗号化通信アプリ「シグナル」のグループチャットに追加されたようだ。

このグループには、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス氏、ギャバード国家情報長官、ベッセント財務長官、ミラー次席補佐官、ラトクリフ中央情報局(CIA)長官らに関連すると思われるプロフィルが含まれていた。

国家安全保障会議の報道官は後に、このメッセージのやり取りが本物のようだと確認し、ゴールドバーグ氏の番号が追加された経緯を調査していると述べた。

この話し合いでは、スエズ運河を通る航路を開通させるためにイエメンの反政府武装組織フーシを攻撃する可能性にバンス氏が反対を表明した場面もあった。同氏が指摘するように、貿易面でスエズ運河に依存しているのは米国よりも欧州であり、欧州のほうが利益を得ることになるからだ。

バンス氏は、トランプ氏が世界貿易を容易にするための攻撃が米国第一主義政策と矛盾することを理解しているかどうか疑問視し、他の政府高官に攻撃を控えるよう促してもいた。

政府高官が今後の軍事攻撃に関わる機密性の高い情報を論じるチャットに誤って自身を追加するとは疑わしい――。そう考えたゴールドバーグ氏は、ヘグセス氏が詳細な戦争計画を伝え、攻撃が差し迫っていると告げるまで、メッセージは手の込んだ荒らしかもしれないと思っていた。

数時間後、ゴールドバーグ氏はX(旧ツイッター)で検索。攻撃が行われていることを知った。国家安全保障の責任者らは、攻撃成功の知らせに絵文字と祝辞で反応したという。ゴールドバーグ氏はその後、チャットから退出した。

これには多くの疑問がある。

――高官らはなぜ、民間の非営利団体が運営するメッセージアプリを利用していたのか? このアプリはメッセージが消えることで有名だ。

これは、記録の保持を義務付ける法律に加え、機密情報に関するさらに重要な法律の両方に抵触する可能性がある。機密情報を議論するための規定は明確に定められている。

――ヘグゼス氏はなぜ、機密扱いではない設定の中で戦争計画を伝達することにさほど抵抗がないのか?

ヘグゼス氏が送信した内容の正確な性質は不明だ。ゴールドバーグ氏はそれを明らかにしなかった。同氏の記事には、その内容に「標的、米国が配備する兵器、攻撃の順序に関する情報」が含まれていたと書かれている。

――この明らかな違反には何らかの結果が伴うか?

この種の違反は、一般的には解雇や収監につながる可能性がある。議会は通常であれば、このような重大な安全保障上の違反と思われる事案についてすぐに調査を開始するだろう。議会は行政府に対するチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の役割を担うからだ。しかし共和党がわずかではあっても上下両院で過半数を占めている今、それが実現するかどうかは不透明だ。

――ここでの明らかな皮肉は何か?

トランプ氏はホワイトハウスでアトランティック誌の報道について問われた当初、同誌を批判する一方で、報道内容はよく知らないと述べた。同氏は、機密資料に関わる物事がどのように作用するかよく知っているはずだ。なぜなら、トランプ氏は2021年の1期目退任後から24年の大統領選で勝利するまでの間に機密文書の取り扱いに不正があったとして起訴されたからだ。この訴訟はトランプ氏が任命した判事によって棄却された。

さらにトランプ氏は、オバマ政権時代にヒラリー・クリントン国務長官が私用のメールサーバーを使用していたことを繰り返し攻撃。特にメールで機密情報について話し合ったことを批判した。今では、トランプ氏の国家安全保障チーム全体のトップが機密扱いされていないシステムで極めて機密性の高い情報について話し合っていたようだ。

――他にどのような事例があるか?

当局者の経験不足や従来とは異なるやり方が問題につながった事例は数多くある。

トランプ政権で中東とウクライナの和平交渉の責任を負うウィトコフ特使は外交官ではなく不動産開発業者だ。それは、ウィトコフ氏が米元司会者のタッカー・カールソン氏のインタビューでロシアの主張を繰り返したも同然だった理由を説明するのに役立つかもしれない。

かつて機密扱いだった大量の情報が急いで公開された際に元政府職員の社会保障番号が漏えいしたこともあれば、最近採用されたCIA職員のファーストネームがホワイトハウス宛ての非機密扱いのメールに含まれていたこともあった。

反多様性の取り組みにより、国防総省では、プロ野球で人種の壁を打ち破ったジャッキー・ロビンソンの軍歴について言及したウェブページが一時的に削除された。

先週には、中国で大きなビジネス上の利益を持つ起業家のイーロン・マスク氏が、中国の情報について国防総省から説明を受ける可能性があると報じられた。トランプ氏はマスク氏がそのような説明を受けることはないとただちに明言したが、国防総省はポリグラフ(うそ発見器)を用いた検査を含むとされる、情報漏えいに関する調査を開始した。

トランプ政権にはまだまだ多くの事例がある。例えば、マスク氏の政府効率化省(DOGE)が核関連職員の解雇を推し進めた結果、エネルギー省が職員の呼び戻しを余儀なくされた。これはおそらく、トランプ氏の支持者らが「ヘドロをかき出す(Drain the swamp)」ことを約束した候補者に投票した際に望んだことの一部だろう。ゴールドバーグ氏に戦争計画のテキストメッセージを送ることに賛成した人など誰もいない。

本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ記者による分析記事です。

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