オランダ鉄道、ホロコースト生存者らに賠償へ
(CNN) 国営のオランダ鉄道は29日までに、第2次世界大戦中に同社の鉄道でナチス・ドイツの強制収容所に運ばれたホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の生存者や犠牲者の遺族に賠償金を支払う方針を明らかにした。
特別委員会を設け、支払い方法などを検討する。オランダ放送協会は、オランダ鉄道は同国北東部にあったベステルボルク収容所経由でユダヤ人家族を強制収容所へ輸送することで多額の利益を得ていたと報道していた。ベステルボルク収容所は強制収容所への移送拠点となっていた。
オランダ鉄道は2005年、戦時中の自らの行動について正式に謝罪し、多くのホロコースト追悼事業などに資金協力もした。ただ、個人単位での賠償には踏み切っていなかった。AFP通信によると、同社は報道発表文で「国家としてのオランダと我が社の歴史にとって暗黒の1ページであり、無視することの出来ない過去である」と述べた。
今回の賠償方針の表明は82歳となったホロコースト生存者であるサロ・ムラーさんとの話し合いが契機になった。ムラーさんは昨年半ばから個人への賠償を求める闘いを開始していた。
サロ・ムラーさんは自らが5歳だった1941年、両親がベステルボルク収容所に入れられた。両親はその後アウシュビッツ強制収容所へ移され殺された/VI-Images via Getty Images
同氏の公式サイトによると、自らが5歳だった1941年、両親はベステルボルク収容所に入れられた。この後、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所へ移され、同所で殺されていた。
母親はムラーさんを幼稚園へ送り届けた直後に連行されていた。ムラーさんは戦争が終わるまで潜伏生活を強いられていた。
米国のホロコースト記念博物館によると、オランダ政府によるベステルボルク収容所の設置は1939年。オランダに不法入国したユダヤ人難民を拘束するためだった。収容者の多くはドイツから逃れていたユダヤ人難民だった。