エジプトのムバラク元大統領死去 29年の強権、アラブの春で失脚
(CNN) エジプトで30年近くにわたる強権体制を築き、2011年の民主化要求運動で失脚したホスニ・ムバラク元大統領が25日、カイロ市内の病院で死去した。息子がツイッターを通じて明らかにした。91歳だった。
実権を握っていた29年の間に、暗殺未遂や健康問題を乗り越え、イスラム過激派の台頭を抑え込み、隣国イスラエルとの平和条約を維持した。
息子のツイートによると、ムバラク元大統領は1月23日に手術を受け、カイロ市内の軍の病院の集中治療室(ICU)に入院していた。
旧ソ連で爆撃機のパイロットとして訓練を受け、1981年に大統領に就任。米国の筆頭級の同盟相手となって、米国から多額の軍事援助を受けた。イスラエルとの平和条約は、かつて敵対していた隣国同士のいわゆる「冷たい平和」の礎だった。
しかしアフリカのチュニジアから始まった2011年の民主化要求運動「アラブの春」がエジプトにも波及して、カイロ市内で警官隊とデモ隊が衝突。ムバラク氏は同年2月、軍に権限を委譲した。
失脚後のムバラク氏は、汚職や権力乱用、反体制派の殺害を謀った罪に問われたが、全ての罪状を否認して、後悔の念は一切示さなかった。
弁護団によると、ムバラク氏は循環器系の疾患や胃がんを患い、衰弱した状態で担架に乗せられて公判に出廷していた。
検察側は死刑を求刑したが、判決では終身刑が言い渡された。その後、2017年に最高裁で無罪が確定し、同年3月に釈放。カイロ近郊とリゾート地シャルムエルシェイクの別荘で余生を送っていた。