ウクライナ、米に新たな長距離ロケット砲求め標的明示も提案
(CNN) ウクライナ政府が強力な長距離ロケット砲システムを米国から新たに調達するため、同国軍が狙うロシア軍の一連の標的を全面的に明示し、標的選定などでの監視の役割を米国側に委ねる提案を行っていることが8日までにわかった。
この問題の協議に通じる多数の政府当局者がCNNに明らかにした。背景にはバイデン米政権がウクライナにこの種の兵器譲渡を渋っている事情がある。
ロシア軍の標的の選択などでの透明性を米国へ示すことは、時には米国がその標的に難色を示す余地を与えることも意味する。ただ、ウクライナ軍による長距離ロケット砲でのロシア本土内への攻撃を危惧するバイデン政権を説得させ得る材料ともなる。
米国はロシア本土への攻撃が起きた場合、ウクライナ戦争の激化につながり、米国がロシアとの直接的な交戦に引きずり込まれる危険性を懸念している。
ウクライナ側が求めているとされるのは米陸軍の地対地戦術ミサイル「ATACMS」。射程は約300キロで、米国が4カ月前からウクライナへ引き渡し、戦局転換に大きく貢献したともされる高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の約4倍に達する。
ATACMSは2017年7月29日に韓国の東部沿岸で実施された合同演習でも使われていた。
バイデン政権はウクライナ側によるATACMSの引き渡し要請をまだ承認していない。ウクライナはハイマースを用い、十分な抗戦能力を発揮しているとの判断も作用している。
バイデン政権は今月5日、ウクライナに対する新たな軍事援助を発表し、追加提供するハイマース18基のための資金も盛り込んでいた。実現すればウクライナが手にする同兵器は30基を超えることになる。
米政権内にはより長距離の能力を持つATACMSをウクライナへ供与した場合、ロシアは米国が兵器供給でレッドラインを越えたと受け止めることを危惧する見方もある。ロシアは、米国がウクライナ戦争で直接的な当事国になったとの認識を抱く恐れにもつながっている。
しかし、このレッドラインの意味合いは、ロシアがウクライナ東部・南部の4州の一方的な併合宣言に踏み切ったことでより曖昧(あいまい)になった。米国は、ロシアがウクライナの占領地を自国領の一部と位置づけたとしてもウクライナ軍がその地域内で西側諸国が差し向けた兵器の使用を支持するとの方針を示している。