ノーベル平和賞、ベラルーシの人権活動家とウクライナ・ロシアの人権団体に
(CNN) ノルウェーのノーベル委員会は7日、ノーベル平和賞をベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏とロシアの人権団体「メモリアル」、ウクライナの人権団体「市民自由センター」に授与すると発表した。
それぞれの国において「戦争犯罪や人権侵害、権力乱用を記録する傑出した取り組み」を評価した。
ノーベル委員会は受賞者について「権力を批判し、市民の基本的権利を守る権利を長年推進してきた」としている。
今回の受賞は、ロシアがベラルーシの支援を受けてウクライナに全面侵攻してから7カ月後のタイミングとなる。
ノーベル委員会によると、市民自由センターは「ウクライナの市民に対するロシアの戦争犯罪を特定し、記録する取り組み」に携わってきた。「国際的なパートナーとの協力の下、加害者の犯罪責任を問うために先陣を切って役割を果たしている」という。
メモリアルは1987年に設立され、ソ連崩壊後のロシアで最も有名な人権監視団体の一つになった。スターリン時代の虐待や残虐行為を明るみに出す取り組みを進めている。
メモリアルは昨年、ロシアの裁判所によって解散が命じられ、骨抜きにされるロシアの市民社会組織にとって大きな打撃となった。
ビャリャツキ氏はベラルーシの人権団体「ビャスナ(春)」の創設者。同団体は当局による政治犯への拷問を記録し、これに抗議する活動を行っている。設立年の96年はロシアと緊密な関係を持つルカシェンコ大統領が独裁的権限を強めた年に当たる。
同氏はベラルーシで80年代半ばに台頭した民主化運動を始めた人物の1人であり、「母国の民主化と平和的発展の促進に生涯をささげてきた」という。
政府当局はかねてビャリャツキ氏の発言を封じようと試みてきた。同氏は2020年のルカシェンコ政権に対する大規模デモのさなかに拘束され、裁判なしで勾留が続いている。ノーベル委員会は「個人としてあまりにも大きな苦難に遭いながら、ビャリャツキ氏はベラルーシの人権と民主主義のための闘いで1インチも譲っていない」とたたえた。
同委員会のライスアンデシェン委員長は「我々は今年、欧州で戦争が起きている極めて異例な状況にある。だがこれは同時に世界中の人々にグローバルな影響を与える戦争でもある」と述べた。さらに、今年の賞がロシアのプーチン大統領など特定の人物にメッセージを送る意図で決まったわけではないとしながらも、プーチン氏が「人権活動家を抑圧する独裁政府」を代表する人物だとの認識を示した。
受賞者は賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億3000万円)を分け合う。授賞式はアルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日に開かれる。