ソウル(CNN) これほどの規模の軍備拡大競争はアジアではかつて例がない。3つの核保有国と急速に核開発を進める国、世界3大経済大国、数十年来の同盟国。こうした国々がこぞって、陸海ともに対立が激化している地域での優位性を競い合っている。
米国とその同盟国である日本と韓国が1つのコーナーに、中国と友好国ロシアが別のコーナーにいる。そして3つ目のコーナーには北朝鮮が存在する。
いずれも他国に先んじようとするあまり、制御不能な悪循環に陥っている。詰まるところ、一方にとっての抑止力とは、相手側から見れば軍備拡張に映るのだ。
「こうした東アジアにおける力関係の悪循環は今後も続くだろう。我々には抑制の手立てや軍備管理がない」。カーネギー国際平和基金で核政策を専門とするアンキット・パンダ氏はCNNにこう語った。
こうした点は、日本の閣僚が今月ワシントンを訪問したことでさらに浮き彫りになった。13日に米国のジョー・バイデン大統領と会談を終えた日本の岸田文雄首相は、東シナ海で中国が行っている軍事活動と、8月に発射されたミサイルが台湾を越えて日本近海に着弾したことに懸念を表明した。
岸田首相は中国政府に「国際秩序の変更」を試みるべきではないと警鐘を鳴らし、中国問題では日米欧の結束が「絶対に必要だ」と述べた。首相の発言の数日前には、日米閣僚が「現に行われており、かつ加速しつつある(中国の)核戦力の増強」を不吉にも話題にしていた。
ホワイトハウス執務室に向かう岸田首相(左)とバイデン米大統領=13日/Kevin Dietsch/Getty Images
ところが北朝鮮や中国にしてみれば、好戦的なのは日本の方だ。両国の目に映るのは、先ごろ防衛費の倍増を宣言し、中国や北朝鮮国内の目標に到達可能な兵器の確保に走る日本の姿だ。つい数日前も中国からの先制攻撃の阻止を念頭に、新型移動式対艦ミサイルを含む新しい米海兵隊部隊を日本南方の島々に新たに配備することが発表され、中国と北朝鮮が抱いていると思しき懸念はますます高まっていることだろう。
こうした動きは米国と日本にとっては抑止力だが、中国政府にとっては拡張だ。