住民に健康被害、美しいビーチが油まみれ 沈没タンカーから大量流出 フィリピン
香港(CNN) フィリピン沖で沈没したタンカーから大量の油が流出し、美しいビーチやダイビングスポットが油まみれになっている。当局者によると、住民は健康被害を訴え、観光業や多様性に富む海洋生物が脅かされている。
「MTプリンセス・エンプレス」は2月28日、首都マニラ南西部の東ミンドロ州沖で沈没し、搭載していた工業用燃料油が周辺の海に流出した。
当局は9地区に非常事態を宣言し、遊泳や釣りを禁止している。
被害が出ている海沿いの町ポラのジェニファー・クルーズ市長は9日、CNN提携局CNNフィリピンの取材に対し、50人以上の住民に健康被害が出ており、せきやめまい、目の不快感、発熱などの症状を訴えていると語った。
「状況はこの9日間で悪化している。悪臭がどんどん強くなり、天気も暑くなっている」「体調を崩す人も増えている。私はこの臭いで気分が悪くなり、被害が出ている場所の一つは訪れることができなかった」(クルーズ市長)
ポラで撮影された写真には、黒い油の塊が海上を漂い、海岸に漂着する様子が写っている。海岸では油まみれの残骸を手で拾い集める作業が行われていた。
同州の人口は90万人以上。観光シーズンを前に、ビーチリゾートは予約のキャンセルが相次いでいる。
ポラにあるブルースター・ビーチリゾートの担当者は「我々の敷地内のビーチにも油が到達し、砂に付着している。何日も前から海岸に漂着している油の強い臭いで体調を崩した人もいる」と語った。
当局によると、環境への影響についてはまだ判断できていない。
しかし環境天然資源省(DENR)は、流出を食い止めなければサンゴ礁や海草、マングローブなどの海洋保護区少なくとも21カ所に被害が及ぶ恐れがあると予想する。
ポラのクルーズ市長によると、油は既にマングローブ林を覆っているという。マングローブ林は海岸の浸食を食い止め、台風などの被害を防ぐ役割を果たしている。