ロシアのスパイ船団、北欧海域で情報収集 現地メディアの合同調査で判明
(CNN) ロシアがスパイ船と疑われる船団を使って、スカンジナビア地方の海域で活動していることが分かった。潜在的な破壊工作プログラムの一環で、海底ケーブルや風力発電基地を標的にしているとみられる。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの放送局による合同調査で明らかになった。
これらの放送局はデータ分析や無線通信の傍受、情報筋を活用し、50隻前後の船舶が過去10年にわたりどのようにして情報収集を行っていたかを突き止めた。具体的には水中監視装置を使って、破壊工作の対象になり得る重要地点を割り出していたという。ノルウェーとスウェーデンの放送局が明らかにした。
ロシアの船舶は軍事訓練のための海域や重要な石油・ガス田、小規模の空港、深水埠頭(ふとう)の他、ノルウェー軍にとって重要な複数の戦略拠点も通過していたという。また北大西洋条約機構(NATO)の演習を突如(とつじょ)追跡するような動きも見せたとしている。
ノルウェーとデンマークはNATO創設時からの加盟国。フィンランドは今月加盟を果たし、スウェーデンもこれに続こうとしている。
調査対象として中心的位置を占める船舶「アドミラル・ウラジミルスキー」は、公式には海底探査に使用されているが、報道によると実際にはロシアのスパイ船だという。上記の放送局各社は同船の動きを追跡し、1カ月間スカンジナビア地方の海域を移動していたことを突き止めた。その際、送信機を切って所在を隠した状態で、風力発電基地近くを航行。スウェーデン海軍の訓練海域も通過したとされる。
デンマークの放送局DRのテレビ取材班が同国とスウェーデンの間の海上で同船に近づくと、覆面をした男性が甲板に現れた。男性は防弾チョッキを装着し、突撃ライフルで武装しているようだった。その様子はカメラに捉えられた。
調査ではロシアの漁船「タウラス」も、普通では考えられない地点に出現したことがあるとしている。同船は2015年から22年にかけてノルウェーに魚を運んでいたが、ある時、軍の射撃訓練場に向かって真っ直ぐ航行し、軍事基地にも接近したという。当該の基地の近くはあらゆる船舶の航行が禁止されている。
ロシアは19日、報道された疑惑を否定。大統領府のペスコフ報道官はCNNの取材に答え、これらの疑惑を「根拠がない」と一蹴した。
ノルウェー情報部を統括するニルス・アンドレアス・ステンソネス氏は同国の放送局NRKの取材に答え前述の報告について、「事態はここへ来て非常に明確になった。ロシアは西側諸国と協力する時期が既に終わり、今や対立関係に入ったと発言している」と述べた。
CNNはノルウェー情報部にコメントを求めたが、現時点で返答はない。