米、比に中距離ミサイル発射装置を初配備 演習契機に 中国反発
シンガポールの南洋理工大学ラジャラトナム国際学研究所(RSIS)のコー研究員は、中国のミサイル戦力が比北部、日本や台湾が含まれる「第1列島線」で米軍に脅威を及ぼしてきたこれまでの状況を「均衡化」する方途とも位置づけた。さらに東方へ延びて米領グアム島を見据える「第2列島線」の防空機能の改善もにらんでいるとした。この二つの列島線は、中国が独自に設けた軍事的な防衛線となっている。
米陸軍の専門誌「ミリタリー・レビュー」は2021年の報告で、中国軍のロケット軍が保持する地上配備型のミサイル戦力は世界で最大規模と説明。通常の弾道ミサイルや巡航ミサイルは2200発を超えるとした。対艦ミサイルの数も十分とし、南シナ海にいる全ての米軍の水上戦闘艦船のミサイル防衛能力を無力化し得る攻撃能力を有しているとも述べた。
MRC配備で中国のこれらの数字的な優位性が一気に崩れるわけではないが、移動能力を持つMRCは中国の作戦立案者に問題を突きつけるだろうとも分析。この点で重要な抑止力にもなり得るとした。
軍事専門家たちは米軍のフィリピンでのMRC配備は恒久的な措置ではないとみている。コー研究員は、フィリピンなどでタイフォンを以前に調べておいた発射地点へ直ちに差し向けられる能力の確保は危機を切り抜けられる可能性を強めると主張。中国側のミサイル戦略における比較的にまだ新しく効果が実証されていない諜報(ちょうほう)収集、監視、偵察活動や標的を絞り込む能力に試練を与えることになるとも読み解いた。