戒厳令は「ディープフェイクかと思った」、韓国野党指導者が振り返る
韓国ソウル(CNN) 韓国の野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)代表は5日、CNNのインタビューに応じ、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が深夜に戒厳令を宣布した時の反応について、最初見た時はディープフェイクかと思ったと振り返った。共に民主党は尹氏の弾劾(だんがい)訴追を求めている。
尹氏は3日夜遅くに異例のテレビ演説を行い、戒厳令を宣布した。これは数時間しか続かず、兵士らを押しのけて議会入りした議員が戒厳令の解除を要求した。
李氏は「あの夜、私は仕事を終え、自宅のベッドで妻と横になっていた。そのとき突然、妻からユーチューブの動画を見せられ、『大統領が戒厳令を宣言している』と告げられた」と振り返る。
「私は『それはディープフェイクだ。ディープフェイクに違いない。現実なはずがない』と答えた」という。李氏が言及したディープフェイクとは、人工知能(AI)で作られた偽の音楽や動画を指す。
「しかし動画を見ると、大統領は本当に戒厳令を宣言していた。それでも私は『これはねつ造だ、フェイクだ』と自分に言い聞かせた」(李氏)
李氏は2022年の韓国大統領選で尹氏の主な対抗馬だった人物。李氏自身、刑事事件で起訴されており、複数の法的な難題を抱えている。
ソウルの大統領府に向かう抗議者ら=4日、韓国/Philip Fong/AFP/Getty Images
韓国は過去40年で活力ある民主主義に変貌(へんぼう)を遂げていただけに、戒厳令の知らせは特に衝撃だった。現在の韓国ではデモが頻繁に行われ、自由が保護されているが、これは長年に及ぶ独裁支配を経て、苦難の末に手にした勝利だ。
李氏は、尹氏による戒厳令宣布から1時間以内にソウルの国会に駆けつけた。そしてSNSテレグラムのグループに参加している他の党員に「可能な限り早く国会に集まってほしい」と伝え、戒厳令の解除決議を可決する必要性を強調した。
国民と議員らは韓国大統領による戒厳令宣布を非難する集会に参加した=4日、韓国ソウル/Ji/Reuters
だが、李氏が国会に到着すると、兵士が建物の封鎖を始めていて議員は中には入れず、上空には軍のヘリコプターが旋回していた。このため李氏はフェンスをよじ登って建物に入り、その模様をすべてライブストリーム配信した。
最終的には計180人の議員が議会内に入り、戒厳令の解除を求める投票を行った。尹氏は4日早朝、戒厳令の解除に追い込まれた。