客室も燃料も翼の中、低燃費旅客機「フライングV」 KLMが開発支援へ
(CNN) オランダのフラッグシップキャリアであるKLMオランダ航空は先ごろ、V字型の機体を持つ低燃費旅客機「フライングV」の開発支援を行うと発表した。
フライングVは、ユストゥス・ベナド氏が独ベルリン工科大学在籍時に考案し、オランダのデルフト工科大学の研究チームが開発した。同機は、客室、燃料タンク、貨物室を全て主翼に組み込んだ斬新な設計になっている。
エアバスの新型機「A350」と比較すると、定員はフライングVが314人に対しエアバスA350が300~350人と大差ないが、燃料消費量はフライングVの方がエアバスA350-900型機より20%少ないという。また、フライングVの翼幅はA350と同じ65メートルのため、空港の既存のインフラがそのまま利用可能だ。
デルフト工科大学のプロジェクトリーダーを務めるロエロフ・フォス氏は、大型電気旅客機の製造技術が開発されるまでの旅客機の燃費効率向上の足掛かりとして、このような技術革新が必要と指摘する。
「航空業界が排出する二酸化炭素量は、世界の総排出量の約2.5%を占めており、業界は今も成長し続けている。われわれは、環境に配慮した旅客機の開発に目を向ける必要がある」とフォス氏は言う。
またフォス氏は、「すべての飛行機を電気飛行機に切り替えるのは不可能だ。電気飛行機は機体が非常に重いため、乗客を乗せて大西洋を横断することはできない。今は無理だし、30年以内の実現も無理だろう」とした上で、「だからこそ、われわれは別の方法で燃料消費量を減らす新技術を考え出す必要がある」と付け加えた。
フォス氏によると、フライングVの燃料効率の高さは、空気抵抗を低減する設計によるところが大きいという。無論、機体の軽量化も燃料効率の向上に役立っている。
デルフト工科大学の研究チームは、今年9月にフライングVのスケールモデルの試験飛行を実施したい考えで、さらに10月にはアムステルダム・スキポール空港で開催されるKLMオランダ航空の創業100周年記念イベントで、新デザインの客室のモデルルームを公開するという。しかし、フライングVの実用化は2040~50年ごろになる見通しだ。