「コーヒーかす」で自動車部品を製造、フォードとマクドナルドが連携
ニューヨーク(CNN Business) 米自動車大手フォード・モーターは2019年からファストフード大手マクドナルドと提携して、ヘッドライトのハウジングにコーヒー豆のかす(チャフ)を使用する取り組みを進めている。
チャフは焙煎(ばいせん)の過程で剥がれるコーヒー豆の薄皮のことで、フォードはこれを一部の車で使われるプラスチック製のヘッドライトハウジングに組み込む方針。マクドナルドは自社で焙煎は行っていないが、フォードと供給業者とを橋渡しする役割を担う。
消費者の間でプラスチック汚染や二酸化炭素排出に対する懸念が強まるなか、企業は近年、環境への影響の低減を目標に掲げてきた。また、消費財製造に使う持続可能な素材の開発も進めている。
フォードで持続可能な素材に関する技術指導者を務めるデビー・ミーウェルスキー氏によると、同社は従来、ヘッドライトハウジングの製造にプラスチックやタルクを使ってきた。コーヒーチャフに切り替えれば軽量化を実現でき、再生不能な鉱物であるタルクを使わなくて済むことから、持続可能性が高まる。
コーヒーチャフは入手が容易な一方で、その大半は廃棄される。フォードは最終的に、チャフをより多く車や部品に利用したい考えだ。
フォードがコーヒーチャフの活用を決めたのは数年前だが、有機物を使う実験自体は10年以上にわたり続けてきた。
2011年からはクッション部分に大豆素材のフォーム(発泡剤)を活用。小麦やココナツ、トマトなどの廃棄物も利用し、持続可能性の目標達成に役立てている。
ミーウェルスキー氏は「私たちのラボに来てもらえれば、埋め立て地と農場の中間のような光景が広がっている」と話す。コーヒーの活用を模索することに決めたのは、それが至る所にあるためだという。
コーヒー豆のかす(チャフ)を使って自動車の部品を製造する取り組みが進められている/Ford
フォードの開発チームは一度コーヒーチャフの活用方法を考案すると、マクドナルドに協力を求めた。理由としてはチェーンの規模もさることながら、フォードに匹敵する持続可能性の目標を掲げていることが大きい。フォードと同様、マクドナルドも再生可能なリサイクル素材を製品に組み込む方針を示している。
フォードとマクドナルドの提携は、異なる取り組みを進めるブランドの間でも協力できるという好例だ。
マクドナルドは最近、米国内の全てのコーヒーを持続可能な方法で調達する目標を1年前倒しで達成したほか、競合他社と共に環境に優しいコーヒーカップの開発も進めている。
グローバル持続可能性部門の幹部、イアン・オルソン氏は、数年前にフォードからコーヒーチャフに関する提案を受けた際、コーヒーの環境への負荷を低減する方法について、別のやり方を検討することもできたと振り返る。
オルソン氏は「私たちは慣習的に、コラボは食品業界内で行うものだと考えてきた」としながらも、マクドナルドにとってフォードとの提携は、別の業界の企業と組んだ際に「どんな大きなインパクトを残せるのか」を見極める助けと指摘した。
オルソン氏は「今回の取り組みは、何が可能なのかを把握する手始めに過ぎない」と力を込めた。