好調な石油株、巨大ハイテク株に取って代わるか
ニューヨーク(CNN Business) ウォーレン・バフェット氏を含む多くの投資家は現在、原油価格が当面高止まりすることに賭けている。石油価格が昨年末の1バレル=約75ドル(約9800円)から現在100ドル超に高騰していることを踏まえると、これは良い賭けといえる。S&P500株価指数の今年の成績上位銘柄はほぼ全てエネルギー株だ。
バフェット氏が出資する「オキシデンタル・ペトロリアム」の株価は2倍に膨らみ、同指数で最も好調な銘柄となっている。S&Pのエネルギーセクターに連動する上場投資信託(ETF)は今年40%あまり上昇したほか、バレロやマラソン・オイル、ハリバートン、ヘス、エクソンモービルといった個別株も大きく値を上げた。
フェイスブックを傘下に持つメタやアップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの親会社アルファベットといった大手ハイテク企業は頭文字を取って「FAANG」と呼ばれるが、「FAANG」ならぬ「FANG」のティッカーシンボルで取引される株もある。それは石油・天然ガス企業のダイヤモンドバック・エナジーで、ハイテク株中心のナスダック総合指数をけん引していた企業の株価が落ち込む中、今年に入り25%近く急伸した。
だが、「黒い金」と呼ばれる石油でもうけるには遅すぎるとの見方もあるかもしれない。石油セクターは依然として変動が激しく、空売り筋の間では、株価のさらなる落ち込みから利益を得ようとエネルギー株の下落に賭ける動きが増えている。9日にダウ工業株平均が650ポイントあまり下落した際は、石油株の下げが最もきつかった。
一方で、インフレはすぐには収まらないとの主張もできる。連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが石油価格を当面下支えする可能性や、過去10年の大手IT企業がそうであったように、エネルギー株やその他の商品関連セクターが長期にわたり市場をリードする可能性もある。
石油価格が高止まりする限り、大手石油会社や掘削会社など原油の影響を受ける企業の利益にとっては追い風になりそうだ。
シノバス・トラスト・カンパニーの上級ポートフォリオ・マネジャー、ウェード・ファウラー氏は先週の報告書で「今年の石油・ガス価格の上昇を考慮すると、1~3月期の決算でエネルギーセクターが最大の収益の伸びを報告する見通しなのは驚きではない」と指摘した。
石油株がハイテク株に追いつくのはまだ先のことに
他の専門家の間では、ウクライナ侵攻を受け多くの欧州諸国がロシア産石油を削減していることから、米国のエネルギー企業は追い風を受けそうだと指摘する声もある。
モーニングスターの定量調査チームのアナリストは先月後半の報告書で、「ロシアが地政学的なのけ者になる状況が続くなか、市場では米国のエネルギー供給に対する欧州の依存度が高まり、米国のエネルギーセクターに追い風になると見込んでいる」と述べた。
ビスポーク・インベストメント・グループのデータによると、エネルギー株が市場全体に占める割合は小さく、S&P500指数のうちの約4.4%に過ぎない。ハイテク銘柄は最近落ち込んでいるとはいえ、依然として同指数の約28%を占め、石油セクターが追いつくにはまだ長い道のりがある。
ただ、ビスポークは最近の報告書で、この差は今後さらに縮まるはずであり、投資家はエネルギー株が再び市場全体のけん引役になる可能性を排除すべきではないと説明。2000年のハイテク株暴落の後、エネルギー株は08年までにハイテク株の組み入れ比率に追いついたと指摘した。
ビスポークのアナリストは「ドットコムバブル崩壊後の00年代半ばに商品株の強気相場が続いた時のようにエネルギーがハイテクに並ぶと示唆しているわけではない」「だが、それはあり得ないことではない」と述べている。
バークシャー・ハサウェイによるオキシデンタルへの投資以外にも、バフェット氏は石油業界に大きく賭けている。今年のダウ平均で最も好調な石油大手シェブロンは、バークシャーの保有する上位4銘柄の一つだ。
「オマハの賢人」率いる同社は先月、シェブロン株の保有額が昨年10~12月期の約60億ドルから259億ドルに増えたことを明らかにした。バークシャーのポジションでこれより大きいのはアップルとバンク・オブ・アメリカ、アメリカン・エキスプレスのみとなる。