モロッコの新興企業、砂漠で作物育てる取り組み
ロンドン(CNN) 気候変動が意味するのは、砂漠化が深刻な問題となりつつあるということだ。かつては肥沃(ひよく)だった土地が劣化することで、2億5000万人が直接的な影響を被っている。
国連によれば、砂漠化は地球の地表の3分の1に影響を及ぼしている。アフリカや南米、南欧、中国の土地の一部や、米国の土地の3分の1が乾燥した状態だ。乾燥した土地を取り戻して農地にすることは、地球の人口を確実に養うことができるようになるための重要なカギとなるかもしれない。
モロッコのスタートアップ(新興企業)「サンド・トゥー・グリーン」の共同創業者で「最高農業責任者」のウィッサル・ベン・ムーサさんによれば、同社は砂漠の一部を5年で、持続可能で収益性の高い農園へと生まれ変わらせることができるという。
ベン・ムーサさんは、砂漠化は将来的に多くの国々で起こるとの見通しを示し、「我々の解決策は、アグロフォレストリーを使い、持続可能で気候変動に強い新しい種類の農業を生み出すことだ」と述べた。
同社のシステムは、汽水源の近くであればどこにでも設置することができ、太陽光発電技術を使って脱塩を行う。その後、混作と呼ばれる方法で、同じ土地にさまざまな果物をつける樹木やハーブなどを植える。蒸発を最小限に抑えるために、脱塩した水を使って、根に直接、点滴灌漑(かんがい)を行う。
土壌は同社が「緑の肥やし」と呼ぶものによって再生される。緑の肥やしは、堆肥(たいひ)やバイオ炭、土壌の「目覚め」を助ける微生物を含む混合物だ。バイオ炭は木炭の一種で、乾燥した土地の保水力を高めることに役立つ。
これにより、わずか2年で収穫できるようになるハーブもある。
「サンド・トゥー・グリーン」の共同創業者で「最高農業責任者」のウィッサル・ベン・ムーサさん/Sand to Green
同社は2017年から、モロッコ南部にある5ヘクタールの試験場で、最高の結果を出すのはどれなのかと、さまざまな植物を試してきた。ベン・ムーサさんのお気に入りは、イナゴマメとイチジク、ザクロで、これらは同社が事業展開を行いたいと考えている地域の固有種であり、農作物として高い価値があるとともに回復力もあるからだという。
砂漠のような環境で作物を育てる取り組みは各地で広がっている。国際塩水農業研究センター(ICBA)は、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの砂地で、耐塩性で栄養価の高い「スーパーフード」を栽培している。タンザニアでは非営利団体が「堤防」と呼ばれる盛り土を使って水を閉じ込め、乾燥した地面に水を浸透させ、草が戻るようにしている。