大気汚染で認知能力低下、研究者らが中国のデータを分析
(CNN) 汚れた空気を長期間吸い続けると認知能力が急激に低下するとの研究結果が、このほど新たに報告された。中国各地に住む計3万2000人のテスト結果を、研究機関のチームが分析した。
研究の成果は28日、学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。
米首都ワシントンに拠点を置く国際食糧政策研究所(IFPRI)の研究者らが、中国家族追跡調査(CFPS)のデータを分析し、大気汚染の短期的、長期的な状況と、2010年と14年の間に実施したテストのスコアとの関係を調べた。
その結果、住民が大気汚染にさらされた期間が長くなるほど、言語テストと数学テストのスコアはどちらも低くなることが判明した。特に年配で学歴水準の低い男性は、その傾向が強くみられた。
研究を主導した北京大学の張暁波教授は「老化し始めた脳が大気汚染で損傷を受ければ、健康面、経済面で相当のコストが生じる」と指摘。認知機能は高齢者が日常の用事をこなしたり、大きな経済的判断を下したりするのに不可欠だと語った。
大気汚染が人々の健康にさまざまな影響を与えることは、すでに知られている。さらに途上国で住民の認知能力が低下すれば、「人的資源」の発展が妨げられるなど、これまで考えられてきたよりはるかに大きな間接的影響が社会に及ぶことも懸念される。
世界保健機関(WHO)の報告によると、汚染物質を多く含んだ空気を吸って生活する人は世界人口の約9割に達している。特にアフリカやアジアにある途上国の都市で、深刻な汚染が目立っている。