「奇妙」が支配する世界、海のトワイライトゾーンの謎に迫る

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口を大きく開けたヨコエソの頭部/Paul Caiger/Woods Hole Oceanographic Institution

口を大きく開けたヨコエソの頭部/Paul Caiger/Woods Hole Oceanographic Institution

自律ロボットが活躍

「トワイライトゾーンの調査時特有の課題は、動物たちの邪魔をしたくないということだ」と語るのは、WHOIの研究主幹を務めるダナ・ヨルガー氏だ。トワイライトゾーンに生息する生物は光と音に敏感なので、それらを監視する際は音の静かな機器を使用し、水はかき乱さず、大半の生物には見えない赤い光を使用する必要がある。

ヨルガー氏は、動きの遅い生物を個別に監視する自律ロボット「メソボット」を開発した。このロボットは、(人間の脳と同じように)ステレオカメラを使って生物の相対的位置を判断しながら、一定の距離を保ちつつその生物の動きに合わせて移動する。このロボットのおかげで、研究者らはその生物の泳ぎ方や獲物の捕らえ方を観察でき、さらにその生物を網で捕獲したら壊れてしまうであろう繊細な身体構造も記録できる、とヨルガー氏はその利点を説明する。

今のところ、このメソボットが監視可能な時間は最大で40分だが、ヨルガー氏は、最終的に24時間監視できるようにしたいとしている。

ソシク氏によると、科学者らはトワイライトゾーンに関する知識を構築するだけでなく、トライライトゾーンが周辺の広い海にどう溶け込んでいるかの把握も目指しているという。

「クジラやサメは我々もよく知っており、海のカリスマ的存在だが、彼らについて知れば知るほど、彼らがトライライトゾーンとのかかわりに依存しているように見える」とソシク氏は言う。

トワイライトゾーンに依存するもう1つの種

また研究者らは、トワイライトゾーンに依存している可能性のある別の種が存在するとの結論に至っている。その種とは人間だ。

この生態系は、二酸化炭素の海洋隔離において極めて重要な役割を果たしていると考えられている。例えば、これは生物炭素ポンプと呼ばれる仕組みの一部だが、水面付近で育つ植物プランクトン(二酸化炭素を吸収する微細藻類)を夜間にトワイライトゾーンから上昇してくる動物プランクトンや魚が食べ、その動物プランクトンや魚のふんが「マリンスノー(海雪)」の一部となる。このマリンスノーには、微生物や細菌の死骸も含まれている。

このマリンスノーをえさにしているのがサルパなどの海洋生物だ。サルパは、ゼラチン質の動物プランクトンで、海洋表面とトワイライトゾーンの両方に生息する。このサルパの果たす役割が歴史的に過小評価されてきた可能性がある、とソシク氏は指摘する。サルパは「膨大な量の水」を浄化することができ、さらにサルパが排泄(はいせつ)した高密度の糞石(ふんせき)は高速で深海に沈むという。

WHOIによると、トワイライトゾーンにおける生物学的プロセスは、合わせて毎年20~60億トンの二酸化炭素を隔離しており、これは少なく見積もって世界のすべての自動車の年間排出量の2倍に相当する。

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