交尾したら超速で跳ね飛んで逃げるオスのクモ、メスに食べられる難逃れ 中国研究
(CNN) メスと交尾したオスが生き延びるためには、特殊な跳躍を必要とする。
中国に生息する「マツガエウズグモ」という小型のクモは、オスが交尾相手のメスに捕食されないよう、ものすごいスピードで跳ね飛んで逃げているという研究結果を、湖北大学の研究チームが科学誌カレント・バイオロジーに発表した。
中国中部の湖北省、湖南省、江西省などの森林に生息するマツガエウズグモは、最大215匹のコロニーをつくり、糸の網をつなぎ合わせて巣を作る。
クモの仲間はセアカゴケグモなども交尾後にメスがオスを食べることで知られる。しかしオスが超速攻でメスから逃げる種のクモが発見されたのは初めてだった。
研究チームは研究室で155回の交尾の様子を観察した。このうち152回はオスが跳ね飛んでメスから逃げ、捕食を免れていた。逃げられなかったオス3匹は、交尾相手のメスの餌になった。
高速撮影カメラでクモの動きを観察した結果、オスのクモは前足をメスの体に押し付けるやいなや、反動で相手を押しやって秒速88センチに達する猛スピードで跳ね飛んでいたことが分かった。
オスはまた、最大で毎秒469回転しながら飛びのいて逃げることもあった。
「これは主にメスから逃げるためだと思う。飛びのいたり回転したりすることで、メスにつかまりにくくなる」と研究者は解説する。
オスが跳ね飛ぶのを邪魔したところ、オスは全て交尾相手のメスに食べられた。このため研究チームでは、飛び上がって逃げる動きは生きるために必要なスキルだと推測している。
交尾を終わらせるのはメスの方で、オスはメスの攻撃性を感じ取ると、すぐに跳ね飛んで逃げるという。
メスがなぜ交尾後にオスを捕食しようとするのかは不明だが、相手のオスを選別して、繁殖パートナーとしての価値があるかどうかを見極めようとしているのではないかと研究者は推測する。
哺乳類と違ってメスグモの生殖器には、精子を蓄えて卵子に到達するのを妨ぐ受精嚢(じゅせいのう)という器官がある。オスが放出した精子は、メスがそれを使うかどうか決めるまで、この受精嚢にとどめられる。
精子を使うと決めればメスは受精嚢から精子を絞り出して卵子を受精させる。望まない精子は体外に排出するか、受精嚢のpH値を変えて殺してしまう。
「メスは跳ね飛んで逃げられたオスの精子を受け入れ、自分が簡単につかまえられたオスの精子は処分しているのかもしれない」(研究者)
マツガエウズグモのメスが巣を離れることはほとんどない。一方、オスは1匹のメスと最大で6回交尾した後、別の巣に移る。
オスグモは交尾の前に、相手のメスの巣と自分の身体を糸でつなぎ、交尾後にこの糸の助けを借りて脱出する。
研究者が交尾の最中にこの糸を切っても、オスは跳ね飛んで逃げることはできたが、糸を伝ってはい上がることはできず、地面に落下した。
オスが飛んで逃げた後にこの糸を伝って同じメスの元に戻り、交尾を繰り返すこともあった。
研究チームは今後、オスの跳躍能力と、繁殖を成功させる能力との間に相関関係があるかどうかを研究したいと話している。