新たな睡眠障害と診断された人物、科学の飛躍的進歩に貢献

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希少な睡眠時の症状が、パーキンソン病などの初期の兆候発見に道を開いた/Photo Illustration by Leah Abucayan/CNN/Getty/AdobeStock

希少な睡眠時の症状が、パーキンソン病などの初期の兆候発見に道を開いた/Photo Illustration by Leah Abucayan/CNN/Getty/AdobeStock

(CNN) ドナルド・ドーフさんがクォーターバックのボールを空中でキャッチし、ゴールラインに向かって全力疾走したとき、観衆の歓声が聞こえた。

ドーフさんは1987年、67歳のときにナショナル・ジオグラフィック誌に「127キロのタックルが待ち構えていたので相手に肩を貸すことにした」と語った。

ドーフさんは「目が覚めると、私は寝室の床にいた」「ドレッサーにぶつかり、あらゆるものを落とし、鏡を壊し、とにかくひどい散らかりようだった。午前1時半だった」と続けた。

米ミネソタ州ゴールデンバレーの元食料品製造業者だったドーフさんの夢が、有名雑誌の特集記事になったのはなぜか。

ドーフさんはこの5年前、レム睡眠行動異常症(RBD)と呼ばれる珍しい病気と診断された。RBDの最初の患者だった。

ドーフさんのケースは、パーキンソン病とレビー小体型認知症という二つの病気について初期の兆候の一つを発見する研究のきっかけにもなった。

症状は、叫んだり、蹴ったり、殴ったり

RBDが発見されたのは82年、ドーフさんが「激しく動く悪夢」を何年も経験した後、カルロス・シェンク博士の患者になったときだった。

シェンク博士によると、レム睡眠の間は脳が基本的に体をまひさせるため、夢を行動で示すことはできない。

しかし、奇妙なことにドーフさんは夢を見ているときに起き上がり、自分で自分の体を傷つけることができたという。そこで研究を進めたところ、ドーフさんの身体的行動はすべてレム睡眠中に起こったことが分かった。これはそれまで報告されたことのない症状だったという。

シェンク氏は、この障害を持つ患者がさらに特定されると、その多くが一連の暴力的症状を示していたと述べた。

患者らはベッドで隣に寝ているパートナーを蹴ったり、殴ったり、大声で叫んだりするほか、ベッドから飛び出して走ったりする。これらの行動はRBDの典型的なものだという。

シェンク氏の研究チームは86年までに、RBDに関する最初の論文を発表した。

しかし、シェンク氏は患者を追跡調査するうちに、もっと気がかりなことを発見した。こうした行動は、後の神経変性に対する「鉱山のカナリア」である可能性があるというのだ。

「レム睡眠時にまひが失われることはRBDの根拠であり、後にパーキンソン病やレビー小体型認知症と診断される最も早期の、最も強力な予測因子だ」(シェンク氏)

RBDは女性も同様に発症

レビー小体型認知症は、パーキンソン病認知症とレビー小体型認知症という二つの異なるタイプの認知症を指す。

パーキンソン病とこの二つの認知症を発症すると、脳幹の内部と周囲の細胞が死滅し始める。脳幹は呼吸、飲み込み、心拍、目と顔の動きに加えて、睡眠と覚醒のサイクルも制御する。

パーキンソン病によって引き起こされる脳幹の早期の損傷は、夢を見ている間に筋肉の動きを止めるという生来の身体能力を妨げる可能性があり、結果として、起き上がったり、叫んだり、暴れたり、夢の通りに行動したりするようになる。

このような夜間の行動は治療で制御できることが多いという。

シェンク氏は96年2月に初めてRBDとパーキンソン病の関連性を発表した。

研究者らは当初、RBDは男性にのみ発症すると考えていたが、女性も同様に発症することに気付いた。

シェンク氏によると、米国の9つの医療センターで臨床試験が進行している。

シェンク氏は、これまで夢遊病や寝言を経験したことがなく、50歳を過ぎて突然夢遊病や寝言が起こり、しゃべり声が大きく頻繁になる場合は、かかりつけ医の診察を受けることを勧めている。

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