アルコールに体液に幻覚剤も、古代エジプト人が儀式で飲んでいたことが判明 新研究
(CNN) 2000年前の容器から幻覚剤や体液、アルコールの残留物が見つかった。研究者によれば、今回の発見は、古代エジプト人が儀式の際に幻覚作用のある飲み物を摂取していたことを示唆している。
古代エジプトの神「ベス」の頭部をかたどった容器で飲まれた液体の化学的な特徴を特定できたのは今回が初めて。ベスは、豊穣(ほうじょう)や保護、薬効、魔術的浄化などを司る神。ベスの形を取り入れた容器はエジプトで長い間生産されたが、現存しているものの数は限られている。しかも、そのいずれもが異なる考古学的文脈の中で発見されており、謎を深めている。
新しい研究結果はサイエンティフィック・リポーツ誌で発表された。今回の調査で使われた容器は現在、タンパ美術館で展示されている。
「長い間、エジプトを研究する人たちは、ベスの頭部が描かれた容器が何に使われたのか、聖水や牛乳、ワイン、ビールなど、どのような飲み物に使われたのかを推測してきた」。そう語るのは報告書の共同執筆者であり、タンパ美術館のギリシャ・ローマ部門のキュレーターを務めるブランコ・バン・オッペン氏。専門家にも、これらの容器が日常生活で使われたのか、宗教的な目的で使われたのか、魔術の儀式で使われたのか分かっていなかったという。
今回の調査では化学物質やDNAの分析も行った。これにより、容器の中に向精神的な作用や薬効を持つ植物が入っていたという物的証拠が初めて見つかった。このことは古代エジプトの儀式に関する文献と神話の両方の検証につながりそうだ。報告書の主筆者であり、サウスフロリダ大学の教授、ダビデ・タナシ氏はそう指摘する。
タナシ氏は声明で、「宗教は古代文明の最も魅力的で不可思議な側面の一つだ」と述べた。今回の研究を通じ、エジプト神話に何らかの真実が含まれることを科学的に証明し、ギザの大ピラミッドの近くにあるサッカラの「ベスの部屋」で行われていたとみられる、これまで解明が進んでいなかった儀式に光を当てることができたとの見方を示した。
古代物質の発見
タナシ氏によれば、研究者が長い間、ベスの容器に興味をそそられてきたのは、この容器がどのように使われてきたのか理解するための文脈がほとんどなく、儀式における役割や、容器に注がれた中身について、仮説を立てることが難しかったためだという。
「全体的にみて、ベスの容器は普通の工芸品ではなく、限られた数しか作られなかった儀式用の品物だった。ベスを崇拝し、ベスを中心とする儀式に参加する人たちだけが入手していた。おそらく、これらの人々は、儀式が実際に行われたことを思い出すために、儀式に使われた後の容器を保管するようになったのだろう」(タナシ氏)