かつて地球に「輪」があった可能性、古生代の寒冷化を解明する手掛かりに? 新研究
(CNN) オーストラリア・メルボルンのモナシュ大の研究チームは、約4億6600万年前、地球に土星のような輪(リング)が存在していた可能性があるという仮説を提唱した。
地球の生命体、プレートテクトニクス、気候に大きな変化をもたらしたオルドビス紀に、地球では隕石(いんせき)衝突の回数がピークに達した。9月12日付の科学誌「アース・アンド・プラネタリーサイエンス・レター」に掲載された研究結果によると、20個以上の衝突クレーターはすべて地球の赤道から緯度30度以内に位置しており、これらの隕石は地球の周囲に存在した岩石のリングから降り注いだ可能性がある。
「21個のクレーターがすべて赤道付近に集中しているのは統計的に珍しい。本来ならランダムに分布しているはずだ」と、モナシュ大学の地質学者で研究の筆頭著者であるアンドリュー・トムキンス教授(地球惑星科学)は述べている。
この新しい仮説は、隕石衝突が急増した原因を明らかにするだけでなく、これまで説明のつかなかった地球史上最大級の寒冷化も、リングの影によって引き起こされた可能性を示唆している。
地球にあった土星のようなリング
小天体が一定の距離以上に惑星に近づくと、ロッシュ限界と呼ばれる距離に達し、潮汐(ちょうせき)力のために破壊される。その結果生じた破片がリングを形成し、土星のリングも氷の衛星の破片から形成された可能性があると米航空宇宙局(NASA)は説明している。
これまで、太陽系内で大型の小惑星が分裂して隕石を生み出し、オルドビス紀に地球に衝突したと考えられてきた。だがそのような場合、月のクレーターのように衝突地点はランダムに分布するはずだとトムキンス氏は指摘する。
今回の研究では、直径約12キロと推定される大型の小惑星が、地球から約1万5800キロの距離に位置していた可能性のあるロッシュ限界に到達したと仮定。小惑星は他の衝突でぼろぼろになり、地球の潮汐力によって分解されやすくなっていた可能性が示された。
また、隕石の衝突が地球のリングからではなくランダムに発生したのであれば、クレーターの大半は赤道から離れた場所に形成されたはずだと同氏は言い添えた。
研究分析によると、衝突クレーターと同時期の堆積(たいせき)物は一般的な隕石成分であるLコンドライトの含有量が高く、こうしたLコンドライトには現在見つかる隕石よりも宇宙放射線への曝露(ばくろ)が短かった兆候が見られた。この発見は、宇宙で風化した大型の小惑星が地球のロッシュ限界内に入り込み、地球付近で崩壊したことを示唆しているという。
隕石衝突が増加した時期から数百万年後の約4億4500万年前には、地球全体の気温が劇的に低下したヒルナンティアン期が訪れた。
このような出来事から生じた破片(リングの可能性含む)が、衝突クレーター、隕石の破片、地球規模の気候変動という三つの現象を説明できるかもしれない、と英ダラム大学の計算宇宙論研究所の准教授であり天体物理学者のビンセント・エケ氏(今回の研究には関与していない)は述べた。
トムキンス氏によると、現在、研究チームは地球全体に氷河期を引き起こすにはどの程度の影が必要だったのかを調査しており、その発見はリングの不透明度を推定する手掛かりになる可能性があるという。同様に、隕石の衝突によって発生した塵(ちり)の雲が地球を冷却した可能性があると付け加えた。